トランプ米政権によるハーバード大学などへの留学生に対する国外追放を示唆する圧力は、世界の優秀な学生や研究者を巡る獲得競争を激化させている。これにより、各国の大学は国際的な人材獲得に向けた誘致合戦を展開しており、特にアジアにおいては、大学ランキングで上位を占める中国の大学が積極的な受け入れ姿勢を鮮明にしている。日本からも複数の大学が名乗りを上げているものの、世界的な「留学生争奪戦」において、日本の大学がその魅力を効果的に伝え、優秀な人材を惹きつけられるかどうかが問われている。
中国政府は、米国の留学生への圧力に対し、明確な反対姿勢を示している。中国外務省の毛寧報道官は、米国の行為は国際的な評判を損なうと批判し、海外で学ぶ中国人学生や研究者の権利保護に全力を尽くすことを強調した。この政府の強い意向を受け、多くの中国国内及び香港の大学が、ハーバード大学などから影響を受ける可能性のある留学生の受け入れに乗り出している。
中国・香港の迅速な対応と具体的な誘致策
名門大学が多く集まる香港では、政府教育局が各大学に対し、ハーバード大学の留学生を積極的に受け入れるよう要請した。これに応じ、香港科技大学は迅速にハーバード大学の学生に入学案内を送付し、「世界クラスの学習環境」を提供するとアピール。無条件入学の提示に加え、入学手続きの簡素化、学業支援、さらには入学申請、単位移行、宿泊施設、ビザ申請などに関する専門サポートチームの設置といった具体的な優遇措置を打ち出した。香港城市大学、嶺南大学、香港中文大学、香港大学といった主要大学も同様の動きを見せ、香港のメディアはこれを「留学生争奪戦」として大きく報じている。北京大学や清華大学など、中国本土のトップ大学も、影響を受けた留学生の受け入れを表明しており、国を挙げた誘致攻勢が展開されている。
米国の留学生政策変更に揺れる国際的な学生コミュニティのイメージ
中国が留学生を引き戻す狙い
こうした中国の積極的な動きの背景には、そもそも米国、特にハーバード大学に多数の中国人留学生がいるという事実がある。2024年10月時点でハーバード大学に在籍する留学生のうち、中国からの学生は全体の2割以上を占める最大勢力となっている。中国政府には、米国の政策変更による混乱を好機と捉え、海外に流出した優秀な頭脳を国内に呼び戻し、自国の科学技術や学術研究を強化する思惑があるとみられる。これは単なる学生支援にとどまらず、国家間の「人材獲得競争」としての側面を強く持っている。
日本の大学が直面する課題
一方、日本からも約90校の大学が留学生の受け入れに意欲を示している。しかし、アジアの競合である中国や香港が打ち出すような、無条件入学や手厚い経済的・手続き的サポートといった積極的かつ迅速な誘致策と比較した場合、日本の大学はいくつかの課題に直面していると言える。言語の壁(英語での授業プログラムの少なさ)、奨学金を含む経済的支援の規模、そして国際的な知名度や情報発信力など、克服すべき点は少なくない。
中国・香港の大学が海外からの留学生誘致に力を入れる様子を示す画像
世界中で優秀な人材を巡る競争が激化する中、日本の大学がその魅力を効果的に発信し、国際的な教育・研究拠点としての地位を確立するためには、より戦略的で具体的な留学生獲得策が求められている。単に受け入れを表明するだけでなく、競争力のあるプログラムや支援体制を整備し、迅速に対応できる柔軟性を持つことが、今後の「人材争奪戦」を勝ち抜く鍵となるだろう。
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