【テヘラン=吉形祐司】イスラエルによるイラン攻撃では、核施設が主な標的となる一方、軍や核開発に関わる重要人物も一斉に殺害された。要人の動向を把握して「一撃必中」の精度で実行しており、イスラエルの対外情報機関モサドの暗躍も指摘されている。
精鋭軍事組織「革命防衛隊」のホセイン・サラミ司令官の死亡情報を地元メディアが報じ始めたのは、イスラエルの攻撃開始から約2時間が過ぎた13日午前5時頃。革命防衛隊は「司令部の執務室で、執務中に死亡した」と発表した。
モハンマド・バゲリ軍参謀総長の死亡の一報は、その直後にもたらされた。参謀本部報道官は「多くの司令官の自宅が標的となった」と明らかにした。ファルス通信は、バゲリ氏の娘の死亡も報じた。
核科学者の死亡も次々と明らかになり、原子力庁の元長官や元副長官、原子力分野の重鎮が含まれていた。軍と核開発の要人が狙い撃ちされたのは明らかだった。
浮上しているのが、イラン国内に潜伏するモサドの要員の存在だ。米紙ワシントン・ポストは13日、イスラエルの治安当局者の話としてモサドの関与を報じた。
イスラム主義組織ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏が昨年7月末、テヘランで殺害された際もモサドの暗躍が指摘された。同氏の宿泊日程や宿泊先の部屋は事前に特定されていたという。
イランでは過去にも多くの核科学者が暗殺されてきた。イランはイスラエルの関与を主張しているが、イスラエル側は認めていない。イランが核開発に固執するのは、「核科学者の血が流されてきた」(アッバス・アラグチ外相)ことも背景にある。イスラエルの思惑とは裏腹に、今回の攻撃で、イランが核開発に対する執念をさらに強める可能性が高いと言える。