昨年3月に死んだ神戸市立王子動物園(神戸市灘区)のジャイアントパンダ・タンタンを、市が剥製(はくせい)と骨格標本にして、中国に返還する準備を進めている。パンダの所有権が中国側にあるためで、市は返還時期を調整している。(神戸総局 森知恵子)
タンタンは1995年9月に中国で誕生した雌で、阪神大震災後の2000年に来園。神戸で長く復興のシンボルとして愛された。
本来は20年7月に中国に戻る予定だったが、コロナ禍や体調不良などで延期になるうちに、24年3月に同園で衰弱死した。国内で飼育されたパンダでは最高齢となる28歳だった。
神戸市によると、中国側との契約で死後であっても返還する必要があり、市が中国側とどのような形で返すかを協議。市が費用約730万円を負担して剥製と骨格標本にして、中国に送ることになった。
剥製と骨格標本は今年3月までに完成し、今は市が保管している。ワシントン条約により、パンダを国外に運ぶ際には生死にかかわらず国の承認が必要で、市は現在手続きを進めている。
王子動物園の竹本真也園長は「タンタンは神戸市民を励まし、勇気を与えてくれた。返還後も、得られた知見を生かし、中国側との共同研究を続けていきたい」としている。
死後のパンダの扱いは、所有権が中国側にあるか、日本側にあるかで異なる。
1972年に日本に初めて来て東京・上野動物園で飼育された「カンカン」「ランラン」ら計6頭は、日本に所有権があり、その剥製は多摩動物公園や国立科学博物館が所蔵している。
一方、タンタンとのペアで王子動物園で飼育されていた「コウコウ」は、中国側に所有権があったため、2010年に死んだ後は、市が冷凍保存して返還した。
和歌山県白浜町のテーマパーク「アドベンチャーワールド」でも、飼育中のパンダが死んだケースがあるが、取材に対し、死後の取り扱いは明らかにしていない。