イスラエルとイランの間で、14日夜から15日未明にかけて再び激しい相互攻撃が発生しました。特にイスラエルが世界最大級のガス田を標的に含めたことで、両国間の紛争が一段と拡大する恐れが高まっています。この状況に対し、トランプ米大統領はイランへの厳重な警告を発すると同時に、紛争は容易に終結させられるとの見方を示しました。
トランプ米大統領の発言
トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、「われわれがイランから何らかの形で攻撃を受けた場合、米軍の全戦力と威力がかつてないレベルで降りかかることになるだろう」と強く警告しました。しかし同時に、「われわれはイランとイスラエル間の合意を容易に成立させ、この血なまぐさい紛争を終わらせることができる」とも述べ、外交的解決の可能性にも言及しました。具体的な合意内容に関する詳細には触れませんでした。
相互攻撃の詳細と被害状況
イスラエル軍は、14日夜にイランからさらにミサイルが発射され、これに対し迎撃システムが稼働したと発表しました。また、首都テヘランにある複数の軍事目標に対する攻撃を実施したことも明らかにしました。
一方、イラン側の発表によれば、イスラエルによる攻撃は多くの犠牲者を出しています。イスラエルが攻撃を開始した13日には78人が死亡したとしており、14日にはテヘラン市内の14階建て集合住宅がミサイルで破壊され、60人が死亡したと主張しています。
これに対し、イランは13日夜にミサイルによる報復攻撃を実行。イスラエル国内で少なくとも3人が死亡する事態となりました。
14日夜から15日未明にかけて、イスラエル国内では緊張が高まりました。14日夜にはエルサレムとハイファで空襲警報が鳴り響き、約100万人が防空壕へ避難しました。15日未明にも新たなミサイル攻撃の警告が出され、住民に避難が促されました。特にテルアビブやエルサレムでは爆発音が響き渡り、ミサイルが空を横切り、迎撃ロケットが発射される様子が確認されました。
イスラエルとイランの衝突激化、イスラエルへ飛来するイランのミサイル
イスラエルの救急当局によると、この一連の攻撃により、10歳の少年や20代の女性を含む少なくとも7人が死亡、140人以上が負傷しました。イスラエルメディアは、テルアビブ南部の都市バトヤムでは攻撃により8階建ての建物が破壊され、少なくとも35人が行方不明になっていると報じています。緊急当局は、この建物の被害で多くの人が救助された一方で、死者も出たと述べています。
イランが報復攻撃を開始した13日以降、これまでにイスラエル国内では少なくとも10人が死亡、300人以上が負傷しています。
イラン国内の標的と警告
イラン側は、イスラエルの攻撃により国内の重要施設が被害を受けたと発表しました。テヘランの石油施設や近郊の精油施設が攻撃されたとしています。また、イランのタスニム通信は15日、国防省の庁舎も攻撃を受け、軽微な被害が出たと報じました。特に懸念されるのは、タスニム通信が報じたイラン南部沖合にある世界最大級のガス田「南パルス油田」への攻撃です。この攻撃により、同油田の生産が一部停止したと伝えられています。南パルス油田はイランで生産される天然ガスの大半を供給しており、その機能停止はイラン経済にとって大きな打撃となります。
イランの革命防衛隊は、ミサイルと無人機(ドローン)を用いてイスラエルのエネルギーインフラと戦闘機向けの燃料施設を攻撃したと表明しました。革命防衛隊はまた、イスラエルが敵対行為を続ける場合、テヘランへの攻撃は「より激しく、より広範囲に及ぶ」と警告し、さらなるエスカレーションの可能性を示唆しています。
国際的な影響
15日にオマーンで開催が予定されていた米国とイランの核協議は、イスラエルの攻撃を受けている間は協議できないとするイランのアラグチ外相の発言により中止されました。しかし米当局者は、交渉への関与を続ける考えを示しており、イランが直ちに交渉のテーブルに着くことを期待していると述べています。
さらに、イラン議会の安全保障委員会委員を務めるエスマイル・コサリ元将軍は14日、イラン政府が戦略的に重要なホルムズ海峡の閉鎖について検討していることを明らかにしました。これは、石油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を封鎖することで、国際社会に圧力をかける狙いがあると見られます。
今回の相互攻撃は、両国間の紛争が軍事目標に留まらず、経済インフラ、特に世界的なエネルギー供給に関わる重要施設にまで拡大したことを示しています。世界最大級のガス田への攻撃やホルムズ海峡閉鎖の可能性への言及は、中東情勢の不安定化が国際経済にも深刻な影響を及ぼしうることを浮き彫りにしています。今後の両国の動向と国際社会の対応が注目されます。
[参照] Reuters