ヤマト運輸、ベトナム人ドライバー500人採用へ 物流業界の人手不足対策に新戦略

日本の物流を支えるヤマト運輸が、深刻化するドライバー不足への新たな一手として、ベトナム人運転手約500人の採用計画を発表しました。現地IT大手FPTとの連携により、2026年から5年間で最大500人のベトナム人ドライバーを迎え入れるこの大胆な戦略は、業界内外で大きな注目を集めています。長年にわたる人手不足に直面する中、この国際的な協力が日本の物流システムにどのような影響をもたらすのか、期待と懸念が交錯しています。

深刻化する日本の物流業界の人手不足

ヤマト運輸がFPTと連携し発表した計画によると、2026年からベトナムのFPTグループ教育機関で特別クラスを開講。希望者は半年間、日本語、日本文化、安全運転の研修を受けます。その後、留学生として1年間日本に滞在し、日本の運転免許への切り替えと大型自動車第一種運転免許の取得を目指し、最終的にヤマト運輸で5年間勤務する予定です。初年度の令和9年から年間約100人ずつ採用が進められます。

この背景には、日本の物流業界が抱える慢性的なドライバー不足があります。特に大型トラックドライバーの平均年齢は50.9歳と高齢化が進んでおり、若手ドライバーの確保が喫緊の課題となっています。今回のベトナム人ドライバーの採用は、将来的な輸送力強化に繋がるものと期待されています。

大胆な採用戦略大胆な採用戦略

現役ドライバーが語る「期待」と「懸念」

ヤマト運輸の大胆な採用戦略に対し、インターネット上では「慣れない日本の道路をいきなり走れるのか?」「補助金目当てではないのか」「日本語の読み書きが不十分な状態で適切に配送できるのか」といった様々な懸念が広がっています。

都内でヤマト運輸のドライバーとして勤務する40代の男性は、この計画について前向きな見方を示しています。「ドライバーの数は実際に足りていないと思います。過重労働とまでは言いませんが、休憩を取るタイミングがないこともありますし、年々ドライバーは辞めていっています。仕事がきつくて辞める人も多いですし、他社からの引き抜きも少なくありません。」彼は、ベトナム人ドライバーがラストワンマイル(顧客に荷物が届くまでの最後の区間)ではなく、拠点間を行き来する長距離の幹線輸送を担当するため、自分たちの業務には直接関係しないとしつつも、「人が増えること自体はいいことだと思いますよ」と述べています。

一方で、別のヤマト運輸ドライバーの男性は、ベトナム人雇用に関する不安を語りました。「日本人であれば1年間でトラックドライバーとして走るのは可能だと思います。ですが、ベトナム人となると正直その期間だけで大丈夫なのかなという不安はあります。」彼は、日本の運転免許取得が世界的に見ても厳しいと言われていることや、外免切り替えの難しさ、さらにヤマト運輸独自の安全運転ルールを挙げ、1年間の教育期間でこれらを習得できるのか疑問を呈しています。「幹線輸送ということなので都内のような複雑な住宅街を走り回ることはないかもしれませんが、それであっても1年間の教育ではまず無理だと思います」と、実務への適応に対する懸念を表明しました。

まとめ

ヤマト運輸によるベトナム人ドライバーの大量採用計画は、日本の物流業界が直面する人手不足という喫緊の課題に対する新たな解決策として注目されています。現役ドライバーからは、人手が増えることへの期待と同時に、異文化・異言語環境での運転技術習得や日本の交通事情への適応に関する具体的な懸念も示されています。この戦略が日本の物流システムに安定と効率性をもたらすのか、今後の動向が注目されます。