西日本鉄道(西鉄)は、脱炭素化に向けた取り組みとして、いすゞ自動車が開発した国産初となる床がフルフラットの大型電気バス1台を導入し、福岡市内のアイランドシティ―天神間の路線で運行を開始した。電気バスは高価格であるため、西鉄はこれまで中古バスを改造して電動化を進めてきたが、今回は国の助成を活用して新車の購入に踏み切った。この新型フルフラット電気バスは、バリアフリー構造や低床化により、すべての乗客にとって利用しやすい設計となっている。
車両の特徴と導入背景
導入された大型電気バスは、車両本体価格が6400万円だが、環境省の補助金を活用することで、西鉄の実質負担額は約3600万円に抑えられている。このモデルは既に大阪・関西万博のシャトルバスとして採用されており、九州での導入は今回が初めてとなる。車両構造として、駆動用モーターを後部の左右両輪に、バッテリーを屋根と後部床下に配置することで、車体全体を低床化。これにより、前部から最後部座席まで段差のない、国内初のフルフラットかつバリアフリー構造を実現した。定員は68人。運行ダイヤは、平日・土曜が朝から昼にかけて3往復、日曜・祝日は朝1往復、夕方~夜に2往復が予定されている。
西鉄が導入した国産初フルフラット大型電気バスの車内、後部座席まで段差がないバリアフリー構造を示す
これまでの電動化戦略と今後の展望
西鉄グループはこれまで、子会社の西鉄車体技術が台湾メーカーの技術指導のもと、中古のディーゼルバスを改造した「レトロフィット電気バス」による電動化を進めてきた。2020年以降、福岡県内の路線に51台を導入済みで、改造費は2024年度で1台あたり約1000万円となっている。今回の新車導入は、国の助成を活用した新たな電動化の手段として位置づけられる。西鉄グループは、2030年度までにグループ全体の約1割にあたる約250台の電気バスを導入する計画だ。今後も中古バスの改造を継続しつつ、新車の購入も並行して検討していく方針であり、脱炭素社会の実現と公共交通のバリアフリー化を推進していく姿勢を示している。