中東地域での緊張が高まる中、イスラエル軍は16日、イランの精鋭部隊であるイスラム革命防衛隊の指揮所や国営放送を攻撃したと発表しました。6月13日の戦闘開始以降、双方での犠牲者が拡大しており、特にイラン側では民間人の死者が多数に上っています。
テヘランの石油施設から上がる炎。イスラエル軍の攻撃による被害。
イスラム革命防衛隊「コッズ部隊」の司令部標的
イスラエル軍の発表によると、今回攻撃対象となったのは、イランの首都テヘラン周辺に分散するイスラム革命防衛隊の国外作戦部隊「コッズ部隊」の20カ所以上の指揮所です。コッズ部隊は、パレスチナ自治区のハマスやイエメンのフーシ派など、中東各地で活動する親イラン武装組織との連携や支援を主任務としています。イスラエル軍は声明の中で、「コッズ部隊はこれらのイランの代理勢力を用いて、イスラエルへのテロ攻撃を実行してきた」と述べ、今回の攻撃を正当化しました。
テルアビブに着弾したイランミサイルの被害。消火活動を行う消防隊員。
市街地への攻撃と住民への退避勧告
さらに、イスラエル軍の報道官は16日、SNSを通じて、テヘランの一部地域住民に対し退避を求めました。軍事目標への攻撃を予告しましたが、対象となった地域は市街地であり、イラン国営放送の施設やレストラン街、さらには日本企業のオフィスなども存在しています。イスラエルのカッツ国防相は同日、国営放送への攻撃があったことを認めました。国営放送は、爆撃を受けスタジオから黒煙が上がる映像などを放送し、AP通信は生放送が一時中断したと報じています。
イラン全土に及ぶ攻撃範囲の拡大
イスラエル軍は、15日にもテヘランの核開発関連施設や国防軍需省を含む80カ所を約50機の戦闘機で空爆したと発表しています。これに加え、兵器工場の空爆や、自国から約2300キロメートル離れた東部マシャドの空港での空中給油機攻撃も明らかにしました。これまでの攻撃は主に自国に近い西部、テヘラン周辺、南部ガス田地域が中心でしたが、今回のマシャドへの攻撃は、イスラエルがイラン全土を攻撃可能な航空戦力を持っていることを示唆しています。
ミサイル発射能力への打撃
イスラエルへの脅威となる地対地ミサイルの発射台120基以上も空爆で破壊したと報告されています。イスラエル軍は、これはイランが保有する約3分の1に相当すると説明。ミサイル攻撃能力の低下を狙ったとみられます。
一連のイスラエルによるイランへの広範囲な攻撃は、両国間の軍事衝突を新たな段階へとエスカレートさせています。特に、イランの重要施設や軍事能力への打撃は、地域の緊張をさらに高める可能性があります。6月13日以降、民間人を含む双方での犠牲者が増加しており、事態の悪化が懸念されています。