開幕から2カ月が経過した大阪・関西万博で、パビリオン建設を請け負った業者への工事費未払いトラブルが相次ぎ、請負業者を苦しめている。これまでネパールやアンゴラなどのパビリオン建設で未払い問題が表面化していたが、新たに中国パビリオンの建設においても、業者間で未払いトラブルが発生していることが明らかになった。
広がる未払い問題の現状
万博では、ネパールパビリオンの建設が代金未払いを理由に1月から工事が中断し、現在も開館の見通しが立っていない。アンゴラパビリオンは4月13日のオープニング初日だけ開館したが、以降は休館が続いている。報道によると、大阪府が建設業法違反の疑いで同パビリオンを調査しているという。このパビリオンの建設に携わった業者らは代金未払いを訴え、5月には「被害者の会」を立ち上げた。ほかにもマルタなど、複数の国のパビリオン建設で、業者が費用の未払いを訴えているケースがある。
新たに浮上した中国パビリオンのトラブル
新たに未払いトラブルが明らかになったのは、中国パビリオンの建設工事だ。工事費の未払いを訴える業者らは、既存の「被害者の会」に加わり、6月13日に記者会見を開いた。彼らは集団訴訟も検討しているとして、「このまま未払いが続けば会社が立ち行かなくなる」と窮状を訴えた。
特定業者の証言
中国パビリオンの電気工事などを手掛けた大阪府内のX社のA社長は、驚きと苦痛をこう語る。「世界の大国である中国のパビリオン工事でお金がもらえないなんて、信じられません」。A社長は、万博という国際的なイベントであり、実質的には公共工事に近い感覚で請け負ったため、ショックは大きいという。X社は元々、別の国のパビリオン工事を請け負っていた。そこに、中国パビリオンの施工を担当している名古屋市のY建設から電気工事の依頼があった。X社が担当していたパビリオンが中国パビリオンと近接していたことから、作業員や機材の融通が利くと判断したA社長は、自社だけでなく関西の別の会社2社にも声をかけ、昨年3月に3社共同で中国パビリオンの電気工事を請け負った。X社がY建設に発行した見積書には、総額1億円を超える金額が記されている。
建設中の大阪・関西万博 中国パビリオン。工事費未払いが問題となっている建築現場。
工事遅延の背景
中国パビリオンの電気工事は万博開幕直前まで続いた。A社長は工期が長引いた最大の理由をこう語る。「何度も設計の変更があり、その度に繰り返しやり直したのが、ぎりぎりまで工事に時間がかかった最大の理由です」。
結論
大阪・関西万博のパビリオン建設における工事費未払い問題は、ネパールやアンゴラなどの国々に加え、新たに中国パビリオンでも深刻化している。請負業者たちは資金繰りに窮し、「被害者の会」を結成して集団訴訟も視野に入れるなど、事業継続の危機に瀕している。度重なる設計変更が工事遅延の一因ともなっており、この広範囲にわたる未払いトラブルは、万博の円滑な運営と建設業界の信頼性に影を落としている。