元テレビ朝日社員の玉川徹氏が、6月16日放送の同局系「羽鳥慎一モーニングショー」に生出演した際、石破茂首相の国民一律2万円給付に関する発言を巡り、テレビ朝日官邸キャップの千々岩森生氏に厳しく反論する一幕があった。政治家の公的発言の信頼性と、それを伝えるメディアの姿勢が問われるやり取りとして注目を集めた。
羽鳥慎一モーニングショーが放送されるテレビ朝日社屋
石破首相の党首討論での「検討せず」答弁
このやり取りの発端となったのは、石破首相が6月11日の党首討論での答弁だ。既に与党側の給付方針が報じられていた国民への現金給付について、国民民主党の玉木雄一郎代表らから再三ただされた石破首相は、それに対し「報道は承知していますが、政府の中で検討したということはありません」と否定していた。しかし、そのわずか2日後には、政府として国民一律2万円給付を正式に発表している。
玉川氏、「政治家は信用されるべき」と首相姿勢を批判
この石破首相の一連の対応について、玉川氏は番組内で強く批判的な見解を示した。玉川氏は「少なくとも党首討論は、自分の言葉で、国民はちゃんと信頼できることを言っているんだという前提で聞かなければ、石破さんの話を信用して聞けない」と指摘。「政治家が、総理が、(私の)言っていることは信用できませんよと、公に言っちゃっているようなものだ」と厳しく述べた。さらに、「党首討論をやるのなら、そういうの(現金給付)を考えているなら言わないと。私たちは、あなたの言うことを信じられませんよとなってしまうと思う」と語り、公的な場での政治家の発言の信頼性の重要性を強調した。
官邸キャップの見解と玉川氏のメディア批判
これを受け、テレ朝官邸キャップの千々岩氏は「玉川さんのおっしゃる通り」と同意しつつも、「政府の政策や外交もそうですが、決まるまでは言えないという部分も確かにある。検討していると言った瞬間に(情報が)ばーっと走りますから、そこを止めたいがために今回、党としてはさんざん検討しているが、政府としては相当無理筋な説明をしたというところですけどね」と、政治部記者としての視点から、首相側の意図を解説しようと試みた。
しかし、玉川氏はこの千々岩氏の解説に対し、「政治部たちは、それを認めちゃだめなんだよ」と一喝。「政治部だって国民の1人でしょう?政局的にはそういうもんだって、あなたたちが言っちゃったら、信用できないということをメディアが認めることになる」と強く反論。メディア関係者も国民としての視点を失わず、政治の論理を安易に追認すべきではないという持論を展開した。
スタジオに走った緊迫感と沈黙
玉川氏の厳しい指摘に対し、千々岩氏は一瞬言葉に詰まり、表情がこわばった。千々岩氏が「そうですね」と応じる中、玉川氏はさらに「それではダメだと思う」「百も承知だったら、そんなこと言わない方がいいと思いますよ」と重ねて疑問を投げかけた。これにより千々岩氏は完全に黙り込み、数秒間の重い空白の時間がスタジオに流れた。番組MCのフリーアナウンサー羽鳥慎一氏が沈黙を破り、「ということです。結局そうなりました」と述べて進行を再開したが、生放送を通じてスタジオ内の緊迫した雰囲気が視聴者にも伝わった。
テレビ朝日の情報番組内で繰り広げられたこの一幕は、政治家の公的な場での発言責任、そしてそれを伝えるメディア、特に政治部記者の姿勢について、改めて視聴者や関係者に問いを投げかけるものとなった。