今、日本では短時間・単発の仕事である「スキマバイト」が注目されています。一方、中国では「スキマ勉強」の風潮が広がり、特に中産階級の間で、教養や自己啓発を目的とした「読書会」(読書クラブ)が急速に広まりつつあります。読書会とは、参加者が同じ書籍を持ち寄り、その本の感想や意見を伝え合う形式の集まりです。専門的な学びから娯楽、リフレッシュまで目的は多様で、有料・無料など様々な形態が存在します。
「知識焦燥」がブームの背景に
なぜこれほどまでに読書会が盛り上がっているのでしょうか。その背景には、新たな知識への強い渇望と同時に、「知識焦燥」と呼ばれる、知識不足によって周囲から取り残されることへの不安や焦りに駆られた心理が関係していると考えられます。近年の中国では、オンライン講座や音声読書アプリの普及により、「スキマ時間で読書や勉強をする」という習慣が浸透しています。こうした流れの中で、「もっと効率よく学びたい」「知識のアップデートに追いつけない」と感じる人々が増加し、読書会への関心が高まっています。
広がる読書会のかたち
読書会は都市部から地方へとじわじわと広がりを見せています。公共施設(図書館、文化センター、大学など)で開かれる公開読書会は誰でも参加可能です。オンライン読書会は、WeChatグループやbilibiliなどのSNSを活用し、時間や場所にとらわれずに参加できる形式で、文字チャットに加え音声やビデオ通話形式も増えています。友人や同僚など気の合う少人数で集まるプライベート読書会も人気です。人気のジャンルは、成功哲学、ビジネス書、自己啓発、心理学、歴史・伝記、そして文学作品まで多岐にわたります。「読む」という行為が、単なるインプットに留まらず、人とのつながりを築く手段となりつつあります。
中国の読書会で学ぶ参加者、「知識焦燥」が原動力か
先駆者「樊登」氏の影響力
読書会について多くの人が言及する名前として、「樊登(ファン・ドン)」氏が挙げられます。彼は読書会ビジネスの先駆者として、そして最も成功した人物の一人とされています。樊氏(49歳)は名門大学で博士号を取得し、かつては中国中央テレビの人気キャスターでした。2013年、彼は安定したキャリアを手放し、「読書の力を広める」という新たな道を選びます。同年6月に西安で初めて開催した無料読書会の参加者はわずか30人でしたが、彼は諦めずに講義を重ね、内容を磨き続けることで参加者の心をつかんでいきました。
まとめ
中国で拡大する読書会ブームは、単なる教養向上への関心だけでなく、急速に変化する社会の中で知識不足に陥ることを恐れる「知識焦燥」という心理が深く関わっています。多様な形式で展開される読書会は、効率的な学びの機会を提供するだけでなく、人との交流やつながりを求める場ともなっています。樊登氏のような先駆者の存在もあり、このブームは今後も中国社会の重要な現象として注目されるでしょう。
参照元: Yahoo!ニュース/東洋経済オンライン