日本人が一生のうちにがんと診断される確率は高く、男性は62.1％、女性は48.9％に上ります（2020年データに基づく）。つまり、およそ2人に1人が一生涯で何らかのがんを経験することになります。がんの罹患はもはや珍しいことではありませんが、もし、ご自身や大切な人ががんの診断を受けたなら、当然ながら大きな不安や様々な悩みに直面するでしょう。このような状況下で、後悔のない治療を選択し、自分らしい生活を送るためには、最初の「病院選び」が極めて重要となります。
不安な状況下での正しい選択
がんの診断から精密検査、そして入院や外来での治療へと続く期間は、非常に慌ただしく過ぎていきます。患者さんは告知後の不安と焦りの中で、落ち着いて熟考する時間を持てないまま、次々とスケジュールの波に飲み込まれ、疲弊してしまうことも少なくありません。その結果、「果たしてこの病院で良かったのだろうか」という疑問を抱きながらも、医師から提案された治療法をそのまま受け入れ、流されるように治療へ進んでしまうケースが多く見られます。
がん診断後の不安、治療選択について医師と話し合う患者のイメージ
しかし、どの病院で治療を受けるかという決断は、その後の治療の成否やQOL（生活の質）を大きく左右すると言っても過言ではありません。この「病院選び」こそが、がん治療における最も重要な鍵を握る選択なのです。自分にとってベストの病院をどうやって選べばいいのかについては、残念ながらあまり知られていません。
長年にわたりがん診療に携わり、様々な病院での勤務経験を持つ外科医・佐藤典宏医師は、YouTubeのがん情報チャンネルで20万人以上の登録者を持つ（2025年4月現在）など、患者さんへの情報提供に積極的に取り組んでいます。彼の著書『がん専門医が伝えたい がん患者が自分らしく生きるためのセルフケア大全』では、診断後の患者さんが自分らしく生きるためのヒントが多数紹介されています。
佐藤医師が提唱する、がん患者さんが自分にとって最適な病院を選ぶための方法は、非常にシンプルで実践的です。それは、これからご紹介する3つの条件を満たす病院を探すというアプローチです。
がんという大きな壁に直面した時、焦りや不安から目の前の選択肢に飛びついてしまうのではなく、一度立ち止まって、信頼できる医療者と共にじっくりと今後の治療方針や病院について検討することが、後々後悔しないためには不可欠です。最適な病院選びは、がん患者さん自身のQOL向上への第一歩となります。
