日本では法律で厳しく禁止されている大麻ですが、アメリカ合衆国では州によって異なるものの、医療用および嗜好用大麻の合法化が進んでいます。特に近年、政府が医療大麻の使用拡大を後押しする動きもあり、高齢者の間で医療目的の利用が広がりを見せています。この現象は、日本の状況とは大きく異なるため、注目すべき点が多くあります。本記事では、米国における医療大麻の現状、特に高齢者への広がりとその背景について掘り下げていきます。
多様な大麻製品が並ぶショップ事情
米国では、嗜好用大麻が24州、医療用大麻が39州で合法化されており(2024年現在)、これらの州では専門の小売店である大麻ショップが一般的に運営されています。例えば、嗜好用と医療用の両方が合法化されているカリフォルニア州では、人口約11万7000人のバークレー市に4軒もの大麻ショップが存在します。
筆者は昨年10月、バークレー市にある大麻ショップ「Farmacy(ファーマシー)」を取材する機会を得ました。店内には多種多様な大麻製品が並んでおり、その品揃えの豊富さに驚かされました。
「ファーマシー」店舗入口(筆者撮影)
まず目を引くのは、大麻成分を含むグミ、クッキー、チョコレートバー、アイスクリームコーンなどの食品です。マネージャーのグレッグ・ブラウン氏によると、レモン味やブルーベリー味のカミノ・グミ(KIVA社)は20個入りで20ドル(約3000円)と手頃な価格であり、若者からシニア層まで幅広い顧客に人気があるとのことです。棚にはKIVA社の他にも、ALLSWELLやPLUSといった競合他社のグミ製品も多数並べられていました。
製品表示とTHC/CBDの違い、医療目的のニーズ
大麻食品が一般的な食品と決定的に異なるのは、個々の製品パッケージに1個あたりの主要な大麻成分であるTHCとCBDの含有量が明確に表示されている点です。例えば、THC10mgのグミは10個入りで合計100mg、THC5mgのグミは20個入りで合計100mgといった具合です。特に注意が必要なのはTHC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量です。
THCには精神活性作用があり、リラックス効果や高揚感をもたらす一方で、過剰に摂取すると思考力や判断力の低下、混乱、不安などを引き起こす可能性があります。そのため、摂取量には十分な配慮が必要です。
一方、CBD(カンナビジオール)には、抗炎症作用、抗不安作用、鎮痛作用など、医学的に期待される効果が多く報告されています。CBDは精神活性作用がほとんどなく、心身への深刻な悪影響の報告も少ないため、医療目的での利用が進んでいます。
KIVA社とALLSWELL社の大麻成分入りグミ製品
大麻ショップを訪れる顧客は、スタッフに嗜好用か医療用かの使用目的を伝えます。医療用の場合は、自身の病気や症状についてできるだけ詳しく説明することで、それに合った製品を選ぶための専門的なアドバイスを受けることができます。これは、多様な症状に対応するための製品知識がスタッフに求められていることを示しています。
様々な摂取方法とその特徴
大麻製品には食品以外にも様々な摂取方法があります。乾燥大麻を紙で巻いて燃焼させる「ジョイント」(喫煙)、大麻の葉を熱して発生する蒸気を吸入する「ヴェポライザー」(肺や気管支への負担が比較的少ないとされる)、大麻成分をエタノールなどに浸して作る液状の「チンキ剤」(舌下に垂らして使用)、皮膚に塗る「クリーム」や貼る「パッチ」、そして「錠剤」や「丸薬」などです。
摂取方法によって効果の現れ方や持続時間が異なります。例えば、大麻食品は消化管を通過して吸収されるため、喫煙に比べて効果を感じるまでに時間がかかりますが、その効果の持続時間は比較的長いという特徴があります。利用者は自身の目的やライフスタイルに合わせて最適な摂取方法を選択しています。
まとめ
米国における大麻合法化は、特に医療分野において新たな選択肢を生み出しており、高齢者の間でもその利用が広がりを見せています。多様な製品の存在、THCとCBDの適切な情報提供、そして利用者の具体的なニーズに基づいた製品選びのサポート体制などが、この広がりを後押しする要因と考えられます。日本の厳しい規制とは対照的な米国の現状は、国際的な視点から社会や医療のあり方を考える上で、示唆に富む事例と言えるでしょう。
参考資料:
https://news.yahoo.co.jp/articles/2a8304ac27d2a87bc3b590b162014b3af998a64c