コメ価格3週連続値下がりも…消費者に届かない「備蓄米効果」と今後の影響

直近のデータで日本のコメ平均価格が3週連続で値下がりしたことが明らかになりました。「2000円の備蓄米」の放出が市場に影響を与えている可能性が指摘される一方で、小売りの現場ではその効果が消費者にまで十分に波及していない現実があります。また、政府が発表したコメの「作況指数」公表廃止という政策変更は、今後のコメ市場にどのような影響を与えるのでしょうか。

平均価格は下落傾向、しかし現場には温度差

5月16日に発表された全国のコメ平均価格(5キロ)は4176円となり、前の週から48円値下がりしました。これで3週連続の下落となり、合計の値下がり幅は109円です。農水省の小泉進次郎大臣も「大変ありがたいことに3週連続下がっている」と述べるなど、政府としては市場価格の安定化に期待を寄せています。3週連続での値下がりは、おととし8月以来、約90週ぶりのことです。

しかし、この平均価格の下落がすべての小売店や消費者に恩恵をもたらしているわけではありません。都内のスーパーのコメ売り場では、5キロあたり5200円、5300円といった高値の銘柄が依然として並んでいます。買い物客からは「5000円だと…迷っちゃう」「値段もどんどん上がっている気がしていて、いつ戻るんだろうって思う」といった、高止まりへの戸惑いの声が聞かれます。

備蓄米放出と小売店の苦悩

大手小売店などで2000円程度の低価格な備蓄米が市場に出回るようになったことは、一部の消費者にとっては朗報ですが、備蓄米を取り扱わない店舗や、特定の銘柄米を主力とする店舗にとっては新たな課題を生んでいます。あるスーパーでは、備蓄米の入荷がないため、通常の銘柄米の価格を下げるに至らず、結果としてコメ全体の売り上げが前月比で約15%も減少したといいます。

小泉進次郎農水大臣が田んぼで農家から意見を聞く視察風景小泉進次郎農水大臣が田んぼで農家から意見を聞く視察風景

売り上げ減に対応するため、店舗側は精米から1か月経過したコメを最大10%値引きするなどして、何とか顧客をつなぎ止めようとしています。このスーパーの食品担当者は、「(備蓄米放出で)うちが仕入れているコメも少しでも値下げというところは期待していた」としながらも、「現段階でいうと、そういった効果はまだ見られず」と、問屋からの仕入れ価格にはまだ大きな変化がない現状を明かしています。

「作況指数」廃止が示す政策の見直し

こうした市場の動きと並行して、農水省はコメのその年の収穫量を示す「作況指数」の公表を廃止することを発表しました。これは、長年にわたりコメ政策や市場価格の指標とされてきた仕組みの大きな見直しと言えます。

16日には福島県のコメ農家を視察した小泉大臣と農家との間で、この作況指数廃止についても話題が上がったとされています。作況指数が公表されなくなることで、今後のコメ生産量の予測や市場への影響をどう把握していくのか、新たな手法が求められることになります。この政策変更が、将来的にコメの需給バランスや価格形成にどのような影響を及ぼすのか、注目が集まっています。

まとめ

コメの平均価格は統計上3週連続で値下がりを見せていますが、これは主に備蓄米の放出といった一部の動きに牽引されたものであり、多くの小売店や消費者の実感としては、依然として高値が続いている状況です。小売店は売り上げ減少に直面し、値引きで対応せざるを得なくなっていますが、仕入れ価格の明確な下落にはつながっていません。さらに、農水省が作況指数の公表を廃止するなど、コメを取り巻く政策環境も変化しており、これらの要因が複雑に絡み合いながら、今後のコメの価格動向と市場環境を形作っていくことになります。

参照:TBS NEWS DIG Powered by JNN