一部の海外パビリオンの開館が遅れたことが話題となっている大阪・関西万博。開催スケジュールは以前から決まっていたにもかかわらず、なぜ開館が間に合わないという事態に陥ってしまったのか。多くの建設会社が受注をためらった理由とは。※本稿は、朝日新聞取材班『ルポ 大阪・関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新書、朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
● 建設申請「ゼロ」 海外パビリオンの建設遅れ
2023年7月1日。朝日新聞は朝刊1面のトップ記事で、海外パビリオンの建設遅れを報じた。
タイプA(編集部注/パビリオンを自国で建てるタイプ)の工事を始めるには、各国が建設会社と話し合って基本設計をつくり、建築基準法で定められる「仮設建築物許可」を大阪市に申請しなければならない。だが申請はその時点で、1件も出ていなかった。
報道から2日後、大阪府庁の地下1階。府知事の吉村は、建設遅れの認識について囲み取材で問われ、開幕まで時間的に余裕がなくなっているのは事実だと認めた。
そして、こう強調した。
「国、博覧会協会、(大阪)府・市が協力して、間に合わせるように進めていきたい。建設業界に、現状をきちんと伝える必要があると思っている」
報道各社も建設遅れについて相次いで報じ、危機的な状況が広く共有されるようになった。
それに突き動かされる形で、万博協会は7月13日、事務総長の石毛による記者会見を大阪市内で開いた。「タイプAについて正しく理解していただくこと」が目的だった。
石毛は会見の冒頭、各パビリオンのデザインや工法が違うため「一概には言えない」と前置きしつつも、こう話した。
「標準的な工期から考えると、年末までに着工すれば開幕には間に合う。大阪市の許可は、それに間に合うように取得していただければ」
万博協会としては、デザインの簡素化や簡易な工法への変更、建設会社への発注の代行を選択肢として各国に示したと説明した。