「実家暮らし長男」が火種に? 相続トラブルのリアル事例と対策の重要性

相続トラブルは、いつの時代も尽きない問題です。親、子ども、きょうだいなど、身近な家族と死後のことを話し合うのは気が重いと感じる人は多いでしょう。しかし、生前対策を怠ったがゆえに、後に想像もつかないような大きなトラブルに巻き込まれるケースが後を絶ちません。本記事では、実際に起こりうる事例を通して、相続を巡る問題の現実と、基本的な対策の重要性を見ていきます。

相続においては、故人の遺産を巡って家族間の関係が泥沼化してしまうことも少なくありません。特に、「実家暮らしのきょうだい」がいる場合、他の家族の間で不満が噴出し、深刻な対立に発展することがあります。

例えば、以下のような事例は、自分事ではないにしても、親戚や友人に起こった出来事として耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。

高村さん一家の事例では、1ヵ月前に父親が亡くなりました。長女のサキコさん(44歳/仮名)と次女のヨシコさん(40歳/仮名)は、認知症の傾向が見られる母親のセツコさん(75歳/仮名)を老人ホームへ入居させることを検討していました。

相続に関する書類を確認しながら話し合う家族の手元相続に関する書類を確認しながら話し合う家族の手元

しかし、姉妹には一つ大きな不安の種がありました。それは長男であるカズオさん(45歳/仮名)の存在です。カズオさんは大学卒業後、一度は上京して大手自動車メーカーに就職しました。ところが、わずか3年足らずで退職し、実家へ戻ってしまったのです。家族が理由を尋ねても、「うるさい」の一点張りで、自室に引きこもりがちになりました。父親が事態を重く見て激怒し、地元企業に再就職させましたが、これも2年で退社。その後はアルバイトを転々としながらも長続きせず、現在は無職の状態です。貯金もほとんどなく、帰郷して以来ずっと実家で暮らし、身の回りの世話はすべて母親のセツコさんが行っていました。

姉妹は、母親が急にいなくなることに長男が耐えられるはずがないと考えていました。同時に、母親自身が老人ホームへの入居に同意してくれるかどうかも不安でした。どうやってこの話を切り出そうか、と悩む日々が続いた末、まずは兄を説得しよう、という結論で姉妹の意見がまとまります。次女が母親を病院へ連れて行ったある日、長女が意を決してカズオさんに話を持ちかけました。

「兄さん、お母さん、老人ホームに入ってもらおうと思うんだけど、いいよね?」

「え?何?なんのこと?」

このように、家族の中に長年扶養状態にあるきょうだいがいる場合、親が亡くなったり、介護が必要になったりした際に、その後の生活や遺産分割を巡って複雑な問題が発生しがちです。話し合いを避けていると、問題はさらに深刻化し、解決が困難になることがあります。

遺産を巡る争いを避け、残された家族が平穏に暮らしていくためには、親が元気なうちから家族で将来について話し合い、適切な生前対策を進めておくことが極めて重要です。これは、単に財産の分け方の問題に留まらず、家族それぞれの人生に対する配慮でもあります。

【参考資料】

  • Yahoo!ニュース(元記事リンク)