イスラエル病院にイランがミサイル攻撃、核施設への報復合戦激化 – 現地からの報告

南部の病院がイランからのミサイル攻撃を受け、多数の負傷者が出たというニュースは、中東地域におけるイスラエルとイランの衝突が新たな局面に入ったことを示しています。このミサイル攻撃は紛争開始から7日目に発生しました。イラン側は、攻撃の標的は病院ではなく隣接する軍事施設だったと主張していますが、イスラエル側は国内各地で271人が負傷したと発表しています。一方、イスラエル軍はイランの核関連施設を標的とした攻撃を実行したことを明らかにしました。今回の衝突が始まって以来、イスラエル国内で少なくとも24人が死亡し、各地で報告された攻撃により合計271人が負傷したと発表しました。他方のイラン国営メディアは、6月15日時点での死者数を224人と報じており、それ以降は情報が出ていません。米首都ワシントンに拠点を置く「人権活動家通信(HRANA)」は、13日以降にイラン国内で639人が死亡したと発表しています。

病院へのミサイル攻撃

今回の衝突は、イスラエルが13日にイランの核関連施設を攻撃し、複数の軍高官や核科学者を殺害したことに対し、イランが報復攻撃を行ったことで激化しました。

被害状況と証言

ルーシー・ウィリアムソン中東特派員は、攻撃を受けたイスラエル南部ベエルシェバにあるソロカ病院から報告しています。彼女によると、病院の被害は甚大で、爆発後も長時間にわたり瓦礫や煙が空中に漂っていました。

イランからのミサイル攻撃によるイスラエルのソロカ病院の被害状況を示す写真。建物の一部が破壊され、瓦礫が散乱している様子。イランからのミサイル攻撃によるイスラエルのソロカ病院の被害状況を示す写真。建物の一部が破壊され、瓦礫が散乱している様子。

攻撃発生時に救急外来で治療を受けていたというアロン・ウジ氏は、避難シェルターへ向かう時間はなかったと語りました。「ベッドに横になっていたら、大きな爆発音が聞こえた」とウジ氏は述べました。「何かをする間もなく、爆発が起きて天井の一部が崩れ落ち、白い粉に覆われた」。彼は「ベッドから出る時間もなかった。ちょうど準備をしていたところで、笛のような音が聞こえた」とその瞬間の様子を詳しく語りました。産科病棟責任者のアシェル・バシリ教授も、自身のオフィスから被害状況を目撃しました。「信じられない光景だった」と彼は述べ、「建物の上部に亀裂が入り、最初の数時間はそこから火が出ていた。すべてが破壊されているように見える」と付け加えました。

死傷者数と病院の対応

バシリ教授は、戦争が始まった時点で全ての患者をより安全な場所へ移していたため、「私たちは本当に、本当に運が良かった」と語りました。しかし、「もっとひどいことになっていたかもしれない。我々はいまだに信じがたい状況の中にいる。終わっていない。明日何が起こるのか、明後日どうなるのか、全く分からない。ただ、生きていることに感謝している」と、現在の不安な状況を吐露しました。病院当局の発表によると、火災が建物の一部に広がり、複数の病棟が完全に破壊されました。窓ガラスが割れ、天井が崩落したとされています。イスラエル保健省は、ソロカ病院でこれまでに71人が負傷したと発表しました。ソロカ病院の最高責任者シュロミ・コディッシュ教授は、約200人の患者を他の医療機関へ移送する予定だと明らかにしています。

イスラエルによる核施設攻撃

標的と背景

一方、イスラエル軍は、イランの核関連施設を標的とした攻撃を行ったと明らかにしており、攻撃対象には「稼働停止中」のアラク重水炉や、ナタンズの施設が含まれています。重水炉は、濃縮ウランと同様に原子爆弾の核部分に使用されるプルトニウムを生成可能な施設です。イスラエル軍は、19日にアラク重水炉を攻撃する前に、周辺住民に早期退避を呼びかけたと発表しました。イラン国営メディアは、同施設付近に2発の飛翔体が着弾したが、放射線による脅威は確認されていないと報じています。イスラエル軍はまた、ナタンズ地域の施設も攻撃し、「核兵器の開発に使用される特殊な部品や装置」が含まれていたと主張しています。イスラエルは、イランが最近になって濃縮ウランの備蓄を「兵器化する措置を講じた」と非難していますが、イランは自国の核計画が完全に平和目的であると一貫して主張しています。

イランの反応と国際機関への抗議

イラン軍は、イスラエルによる攻撃への報復について「制限はない」と警告を発しています。イラン国営メディアは、イラン政府が国連の国際原子力機関(IAEA)に対し、イスラエルが「核施設への攻撃を禁じる国際法に反する行為を継続している」として正式に抗議を申し立てたと報じました。

両国の指導者の声明と警告

イスラエルのシャレン・ハスケル外務次官は、イランによるソロカ病院への攻撃を「意図的かつ犯罪的な行為だ」と非難しました。ハスケル次官は、同病院が南部ネゲブ地域全体の主要な医療拠点だと強調しました。

ネタニヤフ首相の発言

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「テヘランの暴君たちに全ての代償を支払わせる」と強調しました。イスラエルはまた、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師にも警告を発しており、イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は、ハメネイ師は「もはや存在を許されるべきではない」と述べました。ガラント国防相は記者団に対し、「ハメネイはイスラエルの破壊を公然と宣言し、自ら病院への攻撃命令を出している」と語りました。ハメネイ師はイランの最高指導者として、国内のあらゆる政策に対する最終決定権を持っています。イスラエルの民放からハメネイ師を標的にするかと問われたネタニヤフ首相は、「誰も免責されないよう指示している」と答えています。ソロカ病院を訪れたネタニヤフ首相は記者団に対し、イスラエル軍が「イランの核計画に非常に大きな」損害を与えたと語った上で、イランには「他にも核関連の標的」や「核ミサイル」が存在すると主張しました。さらに、「私が約束した通り、我々は核の脅威を排除する。この作戦が終了するまでに、イスラエルに対する核の脅威も、弾道ミサイルの脅威もなくなる」と強調しました。ネタニヤフ首相は公共放送に対しても、イスラエルがイランのミサイル発射装置の「半数以上」を破壊したと述べたほか、核施設の破壊には「あらゆる支援」が歓迎されると語りました。

ハメネイ師の発言と脅威

イランの最高指導者ハメネイ師は、トランプ大統領による降伏の呼びかけを拒否し、アメリカが中東地域に展開する軍事拠点への攻撃を示唆しています。

国際社会の反応と懸念

国連人権高等弁務官のコメント

国連のフォルカー・テュルク人権高等弁務官は、今回の衝突において「民間人が副次的被害として扱われている現状は、極めて痛ましい」と述べました。テュルク氏はまた、「民間人に危害を加える意図があることを示す、憂慮すべき扇動的な言動」に対して警鐘を鳴らしました。

WHO、ICRCの訴え

国際赤十字委員会(ICRC)はソーシャルメディアで、病院は国際法の下で「尊重され、保護されなければならない」と訴えました。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長も声明を発表し、「すべての当事者に対し、医療施設、医療従事者、そして患者を常に保護するよう求める」と呼びかけました。

アメリカの動向

こうした中、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルの軍事作戦への直接関与を検討しています。

トランプ大統領の検討

ホワイトハウスは、トランプ大統領が今後2週間以内に決断を下す見通しだと発表しました。大統領は、「イランとの交渉の可能性が相当程度ある」と考えているとのことです。トランプ大統領自身は18日、イランへの関与について記者団から問われた際、「やるかもしれないし、やらないかもしれない」と述べています。

イランからの警告

これに先立ち、イランのカゼム・ガリババディ外務次官は、アメリカがイスラエルを支援する形で介入した場合、「侵略者に教訓を与えるための手段を行使せざるを得ない」と警告を発しています。トランプ大統領はこれまでのところ、次の一手について明確な方針を示していません。BBCがアメリカで提携するCBSによると、大統領はイランへの攻撃計画を承認しているものの、実行に関する最終決定は保留しているという報道もあります。

今回のイランによるイスラエル病院へのミサイル攻撃と、それに対応するイスラエルの核関連施設への攻撃は、両国間の緊張がかつてないほど高まっていることを示しています。互いの重要な施設への攻撃と指導者たちの厳しい警告は、さらなるエスカレーションの懸念を深めています。国際社会からは民間人の保護と国際法の尊重を求める声が上がっており、アメリカの今後の対応も注目されています。中東情勢は極めて不安定な状況が続いており、事態の推移が注視されています。

参考文献:

  • BBC News
  • Yahoo! News Japan