米国のトランプ大統領は21日、米軍がイランの核施設3カ所に対し攻撃を行い、「大成功」だったと表明した。イランが和平に応じない場合、さらなる攻撃に直面すると警告した。
一方、イスラエル軍によると、イランからイスラエルに向けてミサイルが発射された。ロイター記者はテルアビブ上空で複数回の爆発音、エルサレム上空で迎撃の様子をそれぞれ確認した。イスラエル軍は、イラン西部の軍事目標に対して新たな攻撃を開始したことを明らかにした。
米大統領、攻撃の「壮大な成功」を強調
トランプ氏はホワイトハウスで演説し、「攻撃は壮大な軍事的成功だった」と評価。「イランの主要な核濃縮施設は完全かつ全面的に消滅した」と述べた。
イランの将来は「平和か悲劇か」のどちらかであり、イランが和平に応じなければ他の目標を「攻撃する」と警告した。
米CBSニュースによると、米国は21日、外交チャンネルを通じてイランに接触し、今回の攻撃は体制転換を意図するものではないと伝えた。
トランプ氏によると、米軍が攻撃した3カ所はナタンズ、イスファハン、フォルドゥ。FOXニュースに対し、フォルドゥには6発の地中貫通弾(バンカーバスター)を投下し、他の核施設にはトマホーク巡航ミサイル30発を使用したことを明らかにした。
米政府関係者によると、米軍のB2爆撃機が作戦に関与した。
2025年6月21日、ホワイトハウスでイラン核施設への攻撃成功について演説するトランプ米大統領
トランプ氏は自身の交流サイト「トゥルース・ソーシャル」に、「積んでいた全ての爆弾を主要施設のフォルドゥに投下した」「フォルドゥは消滅した」と投稿した。
また、「イランは今すぐこの戦争を終わらせることに同意しなければならない」とも強調した。
ロイターとの電話インタビューでは、「今夜は素晴らしい成功だった」と指摘。「彼ら(イラン)はすぐに和平に応じるべきであり、さもなければ再び攻撃する」と述べた。
イラン当局、攻撃確認も「汚染なし」主張
タスニム通信はイラン当局者の発言を引用し、フォルドゥ基地の一部が「敵の空爆」による攻撃を受けたことを確認した。しかし、フォルドウ近郊選出議員は、施設は深刻な被害を受けていないとファルス通信に語った。
現地メディアによると、イラン原子力庁は、攻撃後も核施設に放射能汚染の兆候はなく、近隣住民への脅威もないと述べた。
国際原子力機関(IAEA)も、施設外での放射線レベル上昇は報告されていないとしている。
イラン国営放送は、攻撃を受けた3施設について、かなり以前から安全対策を取っていたと伝えた。同放送の副政治部長は、「濃縮ウランの備蓄は核施設から移送されており、攻撃された場合に放射線を発生させ、我が国の国民に害を及ぼすような物質はそこには残っていない」と語った。
イランのアラグチ外相は22日、Xを通じ、米国は国連憲章などに反したと訴えるとともに、イランは自国を守るためにすべての選択肢を有していると表明した。核施設への攻撃は「言語道断であり、永続的な影響をもたらす」と投稿した。
イラン国営テレビのコメンテーターは、地域にいるすべての米国市民や米軍が今や正当な標的になっていると語った。
イラン外務省は、外交プロセスが進んでいる最中に米国がイランに対する戦争を開始したことを世界は忘れてはならないと表明。国際機関に対し、今回のあからさまな攻撃に沈黙することは世界を前例のない広範囲な危険にさらすだろうと訴えた。
各国の反応:イスラエルは称賛、国連は懸念
イスラエルのネタニヤフ首相は演説し、トランプ氏が「大胆な決断」を下したと称賛し、「歴史を変える」と述べた。
イスラエルの公共放送KANは同国当局者の話として、米国の攻撃についてイスラエルはワシントンと「完全に連携している」と伝えた。
ホワイトハウス高官によれば、トランプ氏は攻撃後にイスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談した。
国連のグテレス事務総長は、米国によるイラン攻撃を「危険なエスカレーション」と指摘し、「国際的な平和と安全に対する直接的な脅威だ」と表明した。
米議会で分かれる反応
今回の攻撃を巡っては米議会の反応は分かれており、憲法違反の指摘も出ている。
上院軍事委員会のロジャー・ウィッカー委員長(ミシシッピ州選出、共和党)は作戦を称賛する一方、米国は今「非常に深刻な選択を迫られている」とも警告した。
上院外交委員会のジム・リッシュ委員長(アイダホ州選出、共和党)は、「この戦争はイスラエルの戦争であり、われわれの戦争ではない。しかし、イスラエルはわれわれの最も強固な同盟国の一角であり、世界のためにイランを武装解除しようとしている」と指摘。「これは永遠の戦争の始まりではない。イランの国土に米国の軍隊が入ることはない」とした。
トーマス・マッシー下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は「これは憲法違反だ」とソーシャルメディアに投稿。同議員は外国に宣戦布告する権限は議会にあることについて言及している。
結論
米軍によるイラン核施設への攻撃は、地域の緊張を一層高める重大な事態となった。トランプ大統領は作戦の成功とイランへのさらなる攻撃の警告を発している一方、イラン側は被害を軽微とし、報復の可能性を示唆している。イスラエルは米国の行動を支持し連携を確認する一方、国連からは国際的な平和と安全への脅威として懸念が表明されており、米国内でも議会の反応は分かれている。この攻撃が今後どのような影響を国際情勢にもたらすか、注視が必要である。
参照元
- ロイター (Reuters)