神奈川県藤沢市の慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)にある国際学生寮「H(イータ)ヴィレッジ」で、先月からヤギ2頭が入寮した。寮生が設立した「ヤギプロジェクト」の一環で、寮内の除草や学内外の交流のきっかけにしたいという寮生の願いが込められている。(石塚柚奈)
5月29日、ヤギがのびのびと寮内にある急勾配の空き地を駆け巡っていた。学生や職員など約50人に見守られながら、入寮セレモニーが行われ、同プロジェクト所属の学生が、「2020年生まれ、雄の『カイ』と雌の『マユ』の双子のヤギです」と紹介すると、会場は拍手で包まれた。
23年春に開設した同寮では、約260人のSFCの学生が入寮中で、留学生も約30%に上る。寮生が中心となって、寮の運営やイベント企画などを行っている。
同プロジェクトは、寮父の北崎二郎さん(52)の何げない一言がきっかけで始動した。寮の空き地では、以前から外来種の雑草が生い茂り、その除草は寮父母が担っていた。昨夏、寮生で総合政策学部2年飯尾美咲さん(20)と同部2年ロプレスティみささん(19)が、除草中の北崎さんがこぼした「ヤギでもいたら……」という言葉から、ヤギ除草の着想を得た。
その後昨年10月頃から、2人はヤギ除草を導入している県内の他大学の事例を調べたり、近くにある一般社団法人「湘南やぎの里」(茅ヶ崎市)へ2週間に1度足を運んだりして、半年間かけてヤギの特徴や世話の仕方などを学んだ。
「やぎの里」の職員、岡本里美さん(52)によると、毒草以外の雑草であれば種類を選ばずにヤギは餌とするため、水と塩さえ準備しておけば、自然の力で除草できるという。化学除草剤を使用せずにすむため、生態系や土壌を守ることもできる。
「ヤギは、身体能力も高く、斜面にも強いため、人の手が加えられないような場所で活躍できる」と、草食動物の中でも特にヤギが除草作業に適しているという。
「やぎの里」から寮に、ヤギ2頭を借りられることも決定。2人で始めた取り組みに興味を持つ寮生が自然と集まり、現在ではメンバーは約45人となり、仲間も増え、連日夜遅くまで会議を重ねた。