フジテレビ検証番組への批判:日枝久氏追及不足とジャーナリスト直撃の差

フジテレビが放送した一連の社内問題に関する検証番組は、多方面から厳しい評価を受けている。特に、長年にわたり社を率いた日枝久氏への追及が甘い点や、中居正広氏を巡る問題、さらには女性社員差別といった根深い問題に切り込めていないとの指摘が多く、その内容はお粗末との声が上がっている。番組は日曜朝の放送ということもあり、本気度を疑う向きもあったが、結果として自己弁護に終始したとの印象を与えた。

番組には外部のコメンテーターも出演したが、彼らを起用した意図が最後まで不明瞭であり、内容を深める貢献は限定的だった。中居正広氏を巡る問題における上層部と中居氏側のやり取り、あるいは日枝久体制下での社内の暗部といった核心部分には全く触れず、あまりにも総花的で表面的な内容に終始したことは否めない。

株主総会後の記者会見で質問に答えるフジテレビ清水賢治社長株主総会後の記者会見で質問に答えるフジテレビ清水賢治社長

なぜ、問題の核心とされる元編成部長や、複数のセクハラ事案が報じられた反町理氏、そして諸悪の根源とまで言われる“ドン”日枝久氏に直接話を聞けなかったのか。清水賢治社長を含む現執行部が、これらの人物を恐れ、追及に「及び腰」になっているからではないかとの厳しい見方がある。

一方、ジャーナリストの横田増生氏は「週刊ポスト」(7月18・25日号)で、株主総会を欠席した日枝氏に電話で直撃を試みた。横田氏は日枝氏に質問するためだけにフジテレビの株を購入したという。6月25日の株主総会に日枝氏の姿はなかったが、総会で相当額の役員退職慰労金が支払われると知り、日枝氏の携帯電話に連絡を取ったという。報道に携わる者として、この粘り強さは特筆に値する。

横田氏が日枝氏に対し、20億円超とも報じられる役員退職慰労金について尋ねたところ、日枝氏は「そんなのあり得ません!あり得ません‼ 本当にあり得ないですから」と強く否定した。では正確な金額はいくらかと問われると、「それは言う必要ないけれど、うちはね、退職(慰労)金制度は08年からないんですよ」と回答。しかし、会社側は08年以前から取締役を務めている者には役員退職慰労金が支払われるとしている点を指摘されると、「それはあるんですよ。会社の棚卸資産だったかな、そこに貯めておいて退職する時に支払うんです。今回、3人に払うそうですよ。ボクと、(フジテレビ前副会長の)遠藤(龍之介)君と、監査役の尾上(規喜)さん。正確じゃないよ。ボクは執行部でもないし、人事担当でもないから。退職金はないんですよ」と説明は二転三転した。

また、なぜ株主総会を欠席したのかについては、「もう少し勉強してきてよ。骨が折れちゃって動けないんですよ」と理由を述べたという。日枝氏の回答はほとんど具体的な情報を含んでいないが、横田氏の粘り強い追及の姿勢が浮き彫りになった。

フジテレビの検証番組が批判される最大の理由は、自社の抱える問題を徹底的に洗い出し、膿を出し切って再生しようという覚悟や執念が感じられない点にある。ジャーナリストの外部からの追及と比較すると、その姿勢の差は明らかであり、テレビ局としての信頼性に関わる問題と言えるだろう。