米国がイランの核施設を攻撃したことを受け、イランを支持するロシアのプーチン政権は対応に苦慮しているもようだ。「米国は軍事介入を避けるべきだ」としていたロシアの事前の警告が無視されたことに加え、中東情勢を巡って米露関係が悪化すれば、ウクライナ侵略でトランプ米政権と協調してウクライナに抗戦を断念させようとしてきたロシアの戦略が狂う可能性もあるためだ。
【写真】イランの地下核施設を破壊した特殊貫通弾(バンカーバスター)
ロシアは22日、米国がイランへの攻撃を発表してから約半日後に初めて外務省を通じた公式声明を発表した。ロシアはこの間、声明の表現の検討や、同じくイラン側に立つ中国との立場の調整を行っていたとみられる。
露外務省の声明は、米国のイラン攻撃を「国際法や国連憲章、国連安全保障理事会の決議に違反している」と強く非難した。ただ、同時に対話による解決を求めるなど、米国と決定的な対立を避けたい思惑も示唆した。
プーチン露大統領も20日、露主催の国際会議の全体会合で、イスラエルの先制攻撃を受けたイランを擁護しつつ、ロシアがイランに軍事支援を提供することには消極的な考えを表明。プーチン氏はさらに、「イスラエルには旧ソ連とロシアの出身者が200万人いる。ほぼロシア語圏の国だ」と述べ、イスラエルへの親近感も示した。
ロシアはトランプ政権との接触を通じ、自身が「勝者」となる形でのウクライナ戦争の終結や対露制裁の解除を達成しようとしてきた。ただ、中東情勢の悪化を受け、露国内では「ウクライナ和平への米国の関心が低下する可能性がある」とする分析も出ている。(小野田雄一)