国民民主・玉木代表「外国人の過度な優遇」発言に批判殺到 その真意と政党の釈明、専門家の見解は

6月24日に投開票が行われた東京都議会議員選挙で、国民民主党は前回の0議席から9議席へと躍進しました。しかし、この成功の陰で、党代表である玉木雄一郎氏(56)が来たる7月の参院選に向けたX(旧Twitter)での投稿が大きな波紋を呼んでいます。玉木代表は「手取りを増やす夏」を掲げた政策提言の中で、ある特定の表現を使用し、その真意が問われています。

国民民主党の玉木雄一郎代表が、参院選に向けた発言の波紋を受け厳しい表情を見せる様子。国民民主党の玉木雄一郎代表が、参院選に向けた発言の波紋を受け厳しい表情を見せる様子。

玉木代表のX投稿とその波紋

玉木代表は6月17日、自身のXアカウントを更新し、「”年収の壁”の引き上げ」や「ガソリン暫定税率の廃止」など、家計の「手取りを増やす」ための政策実現への意欲を改めて示しました。その中で、彼はこう述べたのです。

《また、外国人に対する過度な優遇を見直し、日本人が払った税金は日本人のための政策に使います》

この「外国人に対する過度な優遇」という表現は、具体的な内容が示されなかったことから、投稿直後からX上で「差別的ではないか」「排外主義を煽る」といった批判や疑問の声が相次ぎました。ユーザーからは「その『過度な優遇』とは具体的に何のことですか?」「日本で暮らし、納税している外国籍の方々はどう感じるのか」といった問いかけが多く見られました。

さらに、現職の国会議員からも批判が上がりました。立憲民主党の米山隆一氏(57)は、「本当に『過度な優遇』があるなら止めるべきだが」と前置きしつつも、「こういう漠然とした言い方で、如何にも非常に多くの『過度な優遇』があるかのように見せて排外主義を煽る姿勢は極めて残念だ」と指摘。社民党副党首の大椿裕子氏(51)も同様の懸念を示しました。

国民民主党事務所による説明と具体的な4項目

波紋を受け、当サイトは玉木代表の事務所に対し、問題となった「外国人に対する過度な優遇」が具体的に何を指すのか書面で問い合わせを行いました。

事務所からの回答は、まず「外国人に対する偏見やヘイトを助長する意図は全くありません」と差別的意図を否定。その上で、「不正利用など悪意ある外国人に対して無防備なわが国の現場を見直すことを提案しています」と説明しました。そして、見直しの対象として以下の4項目を具体例として挙げました。

  • 外国運転免許証の切替(外免切替)
  • 短期滞在者の国民健康保険加入
  • 外国人に対する生活保護
  • 訪日外国人客に対する消費税免税制度

事務所は、これらの項目それぞれについて、現在の制度の問題点や不正利用の事例、見直しの必要性を詳しく説明しました。

外国運転免許証の切替(外免切替)

回答によると、外国で取得した運転免許証を日本のものに切り替える「外免切替」は、2023年に6万人を超え、10年間で2倍に増加しています。埼玉県三郷市や三重県亀山市では、この制度を利用して免許を取得した外国人による死傷事故が相次いでいることが指摘されました。旅館の領収書が居住履歴として手続きに使われるといった制度の不備や、切り替えのためだけに滞在する外国人がいるとの指摘もあり、制度の厳格化が必要だと訴えています。

短期滞在者の国民健康保険加入

日本に3カ月を超えて滞在する外国人は国民健康保険への加入が義務付けられていますが、治療目的での入国者は対象外です。事務所は、一部の外国人が病気を隠して経営管理ビザなどで入国し、健康保険を利用して治療を受けるケースが指摘されていると説明。また、在留外国人の国民健康保険納付率が63%と、全体よりも30ポイント低い現状にも触れ、不正利用を防ぐための厳格化が必要だと主張しています。

外国人に対する生活保護

外国人への生活保護は、本来は対象外ですが、昭和29年の厚生省局長通知により「当分の間」支給される運用が現在まで続いています。通知が出された当時は在留外国人数が人口の約0.6%だったのに対し、現在は2%を超え、3倍以上に増加している状況を挙げ、法的な位置付けを明確にすべきだと求めています。

訪日外国人客に対する消費税免税制度

日本が諸外国に比べて相対的に物価が安くなっている現状を踏まえ、負担能力のある訪日外国人客にも日本人と同様に消費税の負担を求めるべきだと主張。令和5年の免税購入額は約1.6兆円に上り、課税できれば1600億円の増収が見込めると試算しました。また、転売目的での大量購入や、税関検査を拒否する不正の問題も指摘。来年11月から「リファンド方式」が導入予定ですが、そもそも免税制度自体を廃止すれば、システム変更や税関での混雑も避けられるとしています。

専門家からの疑問視される見解

しかし、ある全国紙の政治部記者は、国民民主党事務所が挙げたこれら4項目を「外国人に対する過度な優遇」と表現することに疑問を呈しています。

記者は、「玉木氏の主張する1から3は、『外国人に対する過度な優遇』ではなく、”制度の不備”や”制度の悪用”に関する問題だ」と指摘。「どれもすでに対策が検討されていたり、対策が講じられている状況であり、これらを『優遇』と呼ぶ意図は全くないことが証明されている」と述べました。

特に、国民健康保険の不適正利用に関しては、厚生労働省が2018年から自治体が出入国在留管理庁に事案を通知する制度を始めていますが、同省によると2018年1月から2023年5月までに通知された34件の調査で、在留資格の取り消しや給付費の返還を求めた事例はなかったとのことです。

生活保護についても、玉木代表が挙げた昭和29年の通知後、2010年に大阪市での問題発生を受けて2011年に新たな通知が出され、より厳格な審査体制が構築された経緯があるとしています。現在、生活保護を受給できる外国人は、定められた在留資格を持つ人々に限られ、条件も日本人と同様であると強調。「『過度な優遇』という表現は、まるで外国人による不正利用で多額の税金が使われているかのようなミスリードを誘う可能性がある」と警鐘を鳴らしました。

参院選を前に問われる国民民主党の姿勢

国民民主党の玉木代表は、過去にも備蓄米を「家畜のエサ」と表現したり、山尾志桜里氏の公認取り消し騒動など、発言や党運営で物議を醸すことがありました。今回の「外国人に対する過度な優遇」発言とその波紋は、都議選での躍進を経て臨む参院選という「本丸」を前に、国民民主党がどのような姿勢で選挙戦を戦うのか、その動向が注目される要因の一つとなりそうです。

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