米国は、イランによる報復テロの可能性を懸念し、関連当局が対応を急いでいる。連邦捜査局(FBI)は最近、ニューヨークやロサンゼルス(LA)などの主要都市支部に対し、イラン関連の脅威に対応するための資源を増強するよう指示を出した。これと並行して、国防総省や州防衛軍との協力も強化している状況だ。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が24日(現地時間)に報じたところによると、FBIは48時間以内にニューヨーク、LA、シカゴ、サンフランシスコ、フィラデルフィアといった主要都市の支部へ、「FBIの最優先課題はイランとそのテロ代理勢力に対し最大限の圧力を加えることである」という内容をまとめた内部メモを伝達した。このメモには、具体的な措置として「テロ組織の資金ネットワーク遮断、海外に拠点を置くハッキング組織への標的捜査、不法石油輸出の取り締まり」などが盛り込まれているという。
このような状況下で、移民・関税執行局(ICE)は先週末にかけて、イラン国籍者11人を逮捕したことを明らかにした。逮捕者の中には、レバノンの親イラン武装組織であるヒズボラと関連のある人物、イラン軍の元狙撃手、さらにはテロ容疑者などが含まれていたことが確認されている。
イランの報復と米国の警戒
米国が21日にイラン国内の核施設3カ所へ空爆を実施したことに対し、イランは中東に駐留する米軍基地2カ所(カタール、イラク)に向けて弾道ミサイル14発を発射し報復行動に出た。しかし、仲介国であるカタールを通じて米国に事前に情報を伝えていたとされ、これは「約束された打ち合い」に近い形で行われたとの見方がある。
このような背景から、米国の軍事的圧力の下でイスラエルとの停戦に合意したイランの「屈辱」が、米国内での報復につながる可能性があるという解釈がなされている。元司法省国家安保局長のマット・オルソン氏はWSJに対し、「イランが米国内で報復を試みる可能性は一層高まった」と指摘。「FBIと司法省は、これを未然に防ぐための警戒態勢を維持しなければならない」と警告している。
サイバー攻撃やヘイトクライムへの懸念
これに関連し、米国土安全保障省は22日にFBIとの合同会議を開催した。その中で、「イランとの対立激化により、極端主義者によるユダヤ系および親イスラエルを対象としたヘイトクライム(憎悪犯罪)や、イラン政府によるサイバー攻撃が懸念される」との警告が発せられた。
サイバー専門家の間では、イランがこれまでに通信、航空、ホテル業などを対象に関心対象者を識別し追跡するためのデータを収集してきた実績があることから、イラン政策に関連する個人や団体が主な標的になりやすいとの分析が出されている。
一方で、今回のFBIの措置は、ドナルド・トランプ政権下での不法移民取り締まり強化政策によって、本来テロ対策を担当する要員が移民関連業務に投入された状況を是正しようとする動きではないかとの解釈も存在する。CBS放送は、FBI関係者2人の話を引用し、「FBI内部からは、本来のテロ・諜報任務の代わりに移民取り締まりに投入された人材を本来の任務に戻すべきだという不満も提起されていた」と報じている。
イリノイ州シカゴで移民取り締まりを行う米連邦捜査局(FBI)要員 (2025年6月16日) – イラン関連脅威への対応強化と不法移民取り締まり間のリソース配分に関する議論を背景に
結論
米国政府は、イランとの緊張状態の高まりを受け、国内外における潜在的な脅威、特に報復テロの可能性に対し、FBIやICEといった主要な法執行機関を通じて警戒および対策を強化している。これは、サイバー攻撃やヘイトクライムといった新たな形態の脅威への懸念とも関連しており、広範なセキュリティ対策が講じられていることを示唆している。また、今回の措置は、内部的なリソース配分の問題にも影響を与える可能性が指摘されている。
参照元
- ロイター
- ウォール・ストリート・ジャーナル (WSJ)
- CBS放送