田原総一朗氏の「死んでしまえ」発言が波紋:高市早苗新首相への物議とジャーナリズムの倫理

日本の憲政史上初の女性首相として、第104代総理大臣に自民党の高市早苗総裁が選出された。歴史的な瞬間である一方で、ジャーナリストの田原総一朗氏が高市首相に対して行った発言が、各方面で激しい批判にさらされ、大きな波紋を呼んでいる。この問題提起は、公共の言論空間におけるジャーナリストの役割と発言の重みを改めて問いかけるものとなっている。

日本の憲政史上初の女性首相に選出された高市早苗氏日本の憲政史上初の女性首相に選出された高市早苗氏

問題視された「激論!クロスファイア」での発言内容

今回、田原氏の発言が問題視されたのは、10月19日にBS朝日で放送された討論番組「激論!クロスファイア」での一幕である。番組には、自民党の片山さつき氏、立憲民主党の辻元清美氏、社民党の福島瑞穂氏がゲストとして招かれ、「高市首相誕生」を見据えた議論が交わされた。

高市氏が自民党きっての保守派と評されることに対し、辻元氏はイタリア初の女性首相となったジョルジャ・メローニ氏を例に挙げ、「バランスを取らなくちゃ、ということで変わっていった」と指摘し、高市氏にも同様のバランス感覚を求めた。さらに、福島氏が高市氏の選択的夫婦別姓反対の立場に触れ、「やっぱり(選択的夫婦別姓に)賛成してほしい」と意見すると、田原氏はこの状況に対し「(高市氏に)反対すればいいじゃん」と応じた。その直後、「あんな奴は死んでしまえと言えばいい」と発言し、かすかに笑みを浮かべたのである。この衝撃的な発言に対し、福島氏は「それは絶対に……」と戸惑いを隠せず、辻元氏も「田原さん、そんな発言して高市さんと揉めてたでしょ、前も」と過去の因縁に触れ、田原氏を諭す場面が見られた。

討論番組「激論!クロスファイア」での発言が問題視されているジャーナリスト田原総一朗氏討論番組「激論!クロスファイア」での発言が問題視されているジャーナリスト田原総一朗氏

田原氏と高市氏の長年にわたる因縁

田原総一朗氏と高市早苗氏の間には、これまでも幾度となく激しい対立があったことが知られている。特に顕著なのは、2002年の「サンデープロジェクト」(テレビ朝日系)での共演時である。この際、田原氏は高市氏に対し「下品で無知な人に、バッジつけて靖国のことを語ってもらいたくない」と発言し、翌週に謝罪する事態となった。また、2016年には高市氏の「電波停止」発言をめぐって両者が対立するなど、その関係は常に緊張をはらんでいた。

今回の番組でも、田原氏は自ら「僕は高市氏と激しくやり合った」と述べ、これまでの因縁を強調しようとしたが、番組はCMに突入し、その話題は中断された。これらの過去の経緯が、今回の発言の背景にあると推測される。

X(旧Twitter)での批判と著名人の見解

田原氏の「死んでしまえ」という発言は、放送後すぐにSNS上で大きな批判の的となった。X(旧Twitter)では、ユーザーから「言って良いことと悪いことの区別付かんならさっさと引退しろ」「安倍総理暗殺の悲劇から何も学んでいない」といった厳しい意見が相次いだ。

登山家の野口健氏もこの件に言及し、田原氏の発言を取り上げた記事を自身のXに投稿した上で、「つまり意見が合わない人に向かって『死んでしまえ』と。更に踏み込めば人様に『死ね!』と表現しているに等しい。テロを容認しているかの発言に唖然。」と強い懸念を表明した。この投稿は、21日時点で126万回超えのインプレッションを記録するなど、大きな反響を呼んだ。野口氏はさらに9分後には、「仮に氏が司会者としてその発言をしたのならば局そのものの責任も問われるのではないか」「公共の電波で『死を促す』発言をするのが果たして『あり』なのかどうか」と述べ、番組を放送した局の姿勢についても疑問を呈した。現在もBS朝日の「朝まで生テレビ!」で司会を務める田原氏だが、今回の発言に対する支持の声はほとんど聞かれない状況だ。

公共の言論空間におけるジャーナリストの倫理

今回の田原氏の発言は、公共の電波で影響力を持つジャーナリストとして、その発言の重さと倫理が改めて問われる事態となった。意見の対立は民主主義において不可欠な要素だが、いかなる背景や因縁があったとしても、相手の人格や存在を否定するような表現は、言論の自由の範囲を超え、社会に不必要な分断や憎悪を生み出す危険性をはらんでいる。特に、政治的緊張が高まる中、言動一つ一つが社会全体に与える影響は計り知れない。

結論

高市早苗氏の初の女性首相就任という歴史的節目において、田原総一朗氏の不適切な発言が大きな影を落とした。公の場で発せられる言葉は、その背景にある意図とは別に、受け取る人々に様々な影響を与える。ジャーナリストとして長年活躍してきた田原氏の今回の発言は、言論の自由が責任と倫理の上に成り立っていることを再認識させるものと言えるだろう。政治家間の議論であれ、メディアを介した発言であれ、相手への敬意と建設的な姿勢が、健全な社会を築く上で不可欠である。

参考資料

  • Yahoo!ニュース (Smart-Flash掲載記事より引用)
  • BS朝日「激論!クロスファイア」放送内容
  • X(旧Twitter)公開投稿