パートナーとの死別は、多くの煩雑な手続きをもたらします。深い悲しみに暮れる中で郵便物に手がつけられない状態が続くと、生活を支えるはずの重要な「緑の封筒」、すなわち年金生活者支援給付金の通知や申請書を見過ごしてしまうリスクがあります。受給機会を逃し、後悔しないために、ご自身の状況を確認することが重要です。本記事では、夫を亡くした悲しみから給付金手続きを長期間行わなかった72歳女性の事例を通じ、その「後悔」から学べる教訓をFPの視点を交えて解説します。
パートナー喪失後の現実：時が止まった妻の物語
千葉県郊外の一戸建てに一人暮らしをする中村弘子さん（仮名、72歳）は、夫・修さんを亡くしてからの4年間を「時計の針が止まったよう」に感じてきました。
修さん（享年72）は地元の金型メーカーで働き続けた技術者でした。二人に子どもはいませんでしたが、夫婦仲は深く、共通の趣味は旅行でした。「大河ドラマの舞台を巡るのが好きで、修さんと一緒に歩いた日々が本当に幸せでした」と弘子さんは振り返ります。
現役時代、弘子さんは同僚の子どもに算数を教えるなど、子ども好きとして知られていました。若い頃から両親への仕送りや実家リフォームの援助もあり、家計に大きな余裕はありませんでしたが、修さんの退職時、退職金含め預貯金は1,500万円でした。
予期せぬ別れ、そして残された手続きの山
4年前、修さんが「息切れがする」と訴え病院を受診したところ、慢性閉塞性肺疾患（COPD）と診断されました。その後、在宅酸素療法中、風邪で容態が悪化。緊急入院1ヵ月後、治療の甲斐なく亡くなりました。
「コロナ禍で面会が制限され、最後にきちんと顔を見て話すこともできませんでした。もっと何かできたはずなのに…」と、弘子さんは悔いを滲ませます。
夫の死後、弘子さんは最低限必要な遺族年金の手続きだけを済ませ、山積み郵便物を見ずに引きこもる生活に。夫宛には投資関連の案内が連日届いたが見る気力はなかったのです。
悲しみが生んだ見過ごし：「緑の封筒」と年金生活者支援給付金
悲しみから立ち直れず、弘子さんは引きこもるような生活を送るようになりました。その中で、彼女は生活を支える上で非常に重要な郵便物、特に年金生活者支援給付金に関する「緑の封筒」が届いていた可能性があったにも関わらず、他の郵便物と一緒に放置してしまったのです。
現在、弘子さんの生活は月14万円の年金と、少しずつ切り崩している預貯金に頼っています。「預貯金は現在1,400万円ほど。施設に入るときの最後の砦だから、なるべく減らしたくない」と、仏壇に語りかける日々です。
もし、あの時「緑の封筒」の中身を確認し、必要な手続きをしていれば、経済的な支えがもう少し手厚くなっていたかもしれません。その機会を逃したことは、弘子さんにとって知られざる「損失」となり、後になって気づく「後悔」の種となっています。
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4年後の気づきと今後の不安
4年という歳月が流れ、少しずつ落ち着きを取り戻した弘子さんですが、失ったものの大きさ、そして手続きを怠ったことによる潜在的な損失に気づき始めています。
年金月14万円に加え、本来受給できたかもしれない給付金があれば、預貯金を取り崩すペースを緩められた可能性もあります。将来の施設入居費用を前に、手続き見過ごしの経済的影響は小さくありません。
FPの三原由紀氏も指摘するように、困難な状況でも年金・給付金通知は見過ごせません。請求には時効がある場合が多いのです。
結論：悲しみに寄り添いつつ手続きを見過ごさない重要性
中村弘子さんの事例は、悲しみによる手続き見過ごしが損失と後悔を生む教訓です。特に年金生活者支援給付金の「緑の封筒」は、生活を支える大きな助けとなる可能性があります。遺族となった際は、家族や専門家の助けを借り、公的手続きや郵便物確認を計画的に行うことが重要です。将来のため、手続き見過ごしに注意が必要です。
