ローマ・カトリック教会の頂点に立つ教皇(法王)フランシスコが11月23日から26日まで日本を訪れた。教皇として38年ぶり史上2度目の訪日で、広島と長崎の両被爆地で行った演説では、核兵器廃絶に向けた強烈なメッセージを全世界に発信した。従来の教皇庁の立場からさらに踏み込み、核抑止力をも否定。仏紙は驚きをもって発言を報じ、米国でも主要各紙が取り上げたが、現実的な見方も浮かび上がらせた。
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□フランス フィガロ
■「核抑止認めず」「中国好き」…バチカンしたたか外交に注視
フランスはカトリック教徒が多く、核保有国でもある。教皇フランシスコが長崎で、平和は「壊滅の脅威」と相いれないと述べ、核抑止論を批判したことへの反響は大きかった。
11月25日付の保守系紙フィガロは、「核兵器に対する日本での攻撃」の表題で方針転換に驚きを示し、教皇が「核兵器の使用だけでなく、抑止のための保有も禁じようとしている」と紹介した。
フィガロは従来の教皇庁の方針について、「教会は1980年代、核抑止力を『必要悪』として認めていた」「教会は核兵器使用を常に非難してきたが、保有や製造には踏み込まなかった」と説明した。82歳の教皇が疲れをものともせず、長崎、広島をたった1日で回る忙しい日程を組んだ執念に触れ、「訪日は、核兵器に対して決着をつけるためのものだった。教皇は、熾烈(しれつ)で長い闘いに挑もうとしている」として、核兵器廃絶に向けた教皇の強い決意を伝えた。
カトリック系紙ラクロワも25日付で、「冷戦のさなか、パウロ6世とヨハネ・パウロ2世は抑止力としての核を容認したが、事態は様変わりした」と方針の変化を大きく報道。「私たちは多国間主義の衰退を目の当たりにしています」という長崎での発言をとらえ、教皇は「米露の中距離核戦力(INF)全廃条約の失効に遺憾の意を示した」と分析した。