【ワシントン=阿部真司、テヘラン=吉形祐司】トランプ米大統領が仲介したイスラエルとイランの停戦は、発効から1日で1週間となる。停戦は辛うじて維持されているが、イランが核開発計画を断念する兆しはない。米国も巻き込んだ軍事衝突が再燃しかねない不安定な状態が続いている。
トランプ氏は6月29日放送の米FOXニュースのインタビューで、米軍による核施設空爆で「イランの核開発計画は終わりを迎えた」と成果を改めて強調した。27日の記者会見では、イランがウラン濃縮を継続すれば再攻撃も辞さない構えを見せ、威嚇した。
トランプ氏は「(イランが)平和的に行動し、これ以上の害を及ぼさないことを示せば制裁を解除する」とも語り、核開発計画を放棄すれば経済発展に協力する考えも示した。硬軟織り交ぜ、イランに譲歩を迫る戦略とみられる。
トランプ氏は核施設の空爆後、中断していたイランとの高官協議を再開し、イランの核開発計画を放棄させる段取りを描いていた。
しかし、イランのアッバス・アラグチ外相は26日、協議再開について「合意に至っていない」と述べるなど、実現は不透明だ。イランでは26日、国際原子力機関(IAEA)への協力を凍結する法律が成立。ラファエル・グロッシ事務局長の訪問も拒否した。
イランには焦点のウラン濃縮を放棄する意思もなく、原子力庁のモハンマド・エスラミ長官は27日、「原子力産業は国家の成功の象徴」として核開発計画を継続する方針を表明した。
トランプ氏がイランの核開発計画を「数十年遅らせた」と主張するのに対し、濃縮ウランが事前に別の場所へ搬出されていたとの見方は根強い。イランの核開発能力への打撃が不透明な中で、核問題解決の見通しは立っていないのが現状だ。