日産、第3世代e-POWER欧州発表 日本導入計画も明らかに

日産自動車は6月26日、欧州市場向けに第3世代e-POWERを搭載した新型「キャシュカイ」を発表しました。英国サンダーランド工場で生産されるこのモデルは、2025年9月から欧州で発売され、その後アフリカやオセアニア市場にも順次展開される予定です。この先進的なハイブリッド技術は、日本市場においても2026年度発売予定の新型「エルグランド」、そして北米市場では2026年度中に発表予定の新型「ローグ」への搭載が計画されており、日本国内のユーザーにとっても注目すべきニュースです。

日産キャシュカイ、第3世代e-POWER搭載モデル日産キャシュカイ、第3世代e-POWER搭載モデル

第3世代e-POWERの進化点:燃費、航続距離、静粛性

キャシュカイに搭載された第3世代e-POWERは、主要な性能指標で大幅な向上を実現しています。燃費性能はWLTPモードで4.5L/100kmに改善し、これはセグメントトップクラスの数値です。これにより、最大航続距離は1200kmに達します。CO2排出量は従来の116g/kmから102g/kmへと約12%削減されました。ドイツ自動車連盟(ADAC)による独立試験では、実走行条件で最大16%の燃費向上、特に高速道路での走行においては14%の向上が確認されています。

また、静粛性も第2世代と比較して最大5.6dB低減され、EVのような静かで滑らかな走行フィールを実現しています。さらに、スポーツモード選択時には出力を10kW向上させるモードが追加され、よりスポーティーで応答性の高いドライビング体験を提供します。

新開発パワートレーンユニットと専用エンジンの技術詳細

第3世代e-POWERの中核をなすのは、新開発のモジュール化された「5-in-1 e-POWERパワートレーンユニット」です。この革新的なユニットは、モーター、発電機、インバーター、減速機、増速機という5つの主要部品を、コンパクトかつ軽量な一つのケースに統合しています。これにより、システム全体の小型化と効率化が図られました。モーターの最高出力は、従来比11kW向上し151kWとなりました。バッテリー容量は2.1kWhと前世代と同等ですが、ユニット自体の高剛性化と軸構造の最適化により、走行時に発生する音や振動が大幅に抑制されています。

このユニットと組み合わされるのは、e-POWER専用に完全新設計された直列3気筒1.5リッターターボエンジンです。日産独自のSTARC燃焼コンセプトを採用することで、シリンダー内燃焼の安定化を高度に実現し、驚異的な熱効率42%を達成しました。これにより、低速域でも非常に静かで効率的なエンジン駆動が可能となっています。効率を最大化するために大型ターボや最終減速比の変更も行われ、高速走行時のエンジン回転数を従来より約200rpm低く抑えることで、さらなる騒音低減に貢献しています。e-POWER専用設計とすることで、可変圧縮比技術は不要となり、また潤滑油に0W16を採用することでエンジン内部の抵抗を低減しました。さらに、オイル交換推奨距離が1万5000kmから2万kmへと延長され、メンテナンスの手間も軽減されています。

まとめ:日産のハイブリッド戦略における重要性

日産自動車のチーフテクノロジーオフィサーである赤石永一氏は、この第3世代e-POWERについて「日産のハイブリッド技術を再定義するもの」と述べ、あらゆる状況で滑らかで応答性の高い走行を提供すると強調しています。約10年にわたる開発で培われた知見が集約され、より効率的で洗練された、競争力のあるシステムが実現しました。キャシュカイでの導入は、この先進技術の展開の始まりに過ぎず、2026年度には日本市場や北米市場への投入が予定されており、日産の電動化戦略において極めて重要な役割を果たすことが期待されます。