海陽学園(かいようがくえん)は、将来の日本社会を牽引するリーダー育成を目的とする全寮制の中高一貫校です。塾業界のベテランである中学受験PREX代表の渋田隆之氏と、同学園の西村英明校長との対談から、そのユニークな教育哲学と社会への貢献を目指す理念に迫ります。大学進学だけでなく、社会で活躍する人材を育てる海陽学園の取り組みとはどのようなものでしょうか。
企業家たちが託した「社会還元」の教育理念
海陽学園は、単に学業成績を追求するだけでなく、社会で真に活躍するリーダーを育てることを目指しています。学校設立の出発点には、家庭や地域社会を含めた包括的な教育環境を創出するという思いがありました。西村校長が校長に就任する際、当時の理事長であった故・葛西敬之氏(元東海旅客鉄道〈JR東海〉名誉会長)は、企業が母体である学校であっても利益を上げることを目的とはせず、将来卒業生たちが社会に出た際に社会が利益を得る、すなわち「社会還元」こそが真の利益であると語ったといいます。学校経営の数字にとらわれず、常に将来を見据えた教育を行うよう託されました。
リーダーシップと並ぶ「フォロワーシップ」の重要性
海陽学園の教育で特徴的なのは、リーダーシップだけでなく、「フォロワーシップ」も1年生から教えている点です。これは、優れたフォロワーがいなければ組織は成り立たないという考えに基づいています。
優秀なフォロワーは優れたリーダーにもなりうる
リーダーとは、その集団の中で最もふさわしい人物が務めるべきだという柔軟な考え方を育んでいます。ある集団ではリーダーでなかったとしても、別の集団で適切なリーダーがいなければ、自分がその役割を担う、という臨機応変な対応力を重視しています。卒業生に話を聞くと、在学中にリーダー経験が少なくても、卒業後にゼミ長や部長などを務める人が多いそうです。これは、在学中にリーダーの役割やあるべき姿をしっかりと観察し学んでいるため、将来どの立場になっても自分の役割を果たす力が身についているからだと考えられます。集団の中で最も優れている人だけがリーダーに向いているわけではなく、集団の一人ひとりの力を引き出し、集団全体の力を高められる人がリーダーであるという認識も共有されています。こうしたリーダーシップは、全寮制の集団生活の中でこそ生まれる力です。
全寮制が育む「他者理解」と人間力
全寮制である海陽学園では、多様なバックグラウンドを持つ生徒たちが寝食を共にします。寮生活では、必ずしも気の合う人ばかりではありません。好きになれない相手や、意見が合わない相手とも一緒に生活していく必要があります。
全寮制の海陽学園で学ぶ生徒たちの様子
このような環境の中で、生徒たちは自分とは異なる他者を受け入れ、共に生活していくプロセスを学びます。これは、将来社会に出た際に不可欠な、多様性を理解し受け入れる力、人間関係を築く力を養う上で非常に重要な経験となります。寮生活を通じて培われる他者理解と協調性は、海陽学園が目指す「社会を変えるリーダー」育成の基盤となっています。
海陽学園の教育は、単なる学力向上にとどまらず、全寮制という独自の環境を通じて、将来社会で求められるリーダーシップ、フォロワーシップ、そして多様な他者を受け入れる人間力を育むことに焦点を当てています。故・葛西氏の「社会還元」という理念に基づき、卒業生たちが社会に貢献できる人材となることを目指す、その教育哲学は多くの示唆を与えています。
記事提供元: ダイヤモンド・オンライン
Yahoo!ニュースより