「なんだか体調がすぐれない」「疲れやすい」「イライラする」「眠りが浅い」――これらの不調を「更年期だから仕方ない」と片付けてしまうのは、時に危険であり、また改善の機会を逃してしまうことでもあります。更年期の症状は個人差が大きく、「何の症状もなかった」という人がいる一方で、「毎日がつらくて、仕事や家事も手につかない」と悩む人もいます。この大きな個人差の背景には、実は「栄養状態」が深く関係していると、医師の梶尚志氏は指摘します。自身の著書『更年期の不調の原因は栄養不足が9割』で、梶氏は少しの工夫で生活を輝かせるための重要なポイントを解説しています。
更年期症状はどのように始まるのか? 日常の小さな変化から
更年期の不調は、ある日突然劇的に現れるというよりも、「なんとなく体調の悪い日が増えた」といった、ささやかな違和感から徐々に始まることが多いのが特徴です。また、体調には波があり、「昨日は元気だったのに、今日はどうも調子が悪い」といったように、良くなったり悪くなったりを繰り返すのも、この時期特有の変化と言えるでしょう。
このような変化が起こるのは、女性ホルモンの分泌量が日によって大きく変動するためです。私たちの体は、このホルモンバランスの揺らぎの中で、なんとかして均衡を保とうと奮闘しています。それに加えて、更年期を迎える世代の女性は、家庭や仕事、将来設計など、人生におけるさまざまなストレスを抱えやすい時期でもあります。こうした心身への負担が重なることで、不調の波をより強く感じさせる要因となることも少なくありません。しかし、このような波があることを理解していれば、「今はつらいけれど、また好調な時期がきっと来る」と前向きに捉え、心を落ち着かせることが可能になります。
更年期の不調に悩む女性のイメージ
更年期に関するよくある誤解を解消
更年期については、世間的なイメージや思い込みで語られることが多く、それが時にご自身の不調を見過ごす原因になってしまうことがあります。正しい知識を持つことが、適切な対処への第一歩です。
誤解1: 更年期は「イライラ」だけの時期?
「更年期はイライラするもの」というイメージが強いかもしれませんが、実際にイライラしやすくなる方もいる一方で、全く感じない方もいます。気分が落ち込んだり、不安感が募ったり、涙もろくなったりと、心の症状の出方は人それぞれで多岐にわたります。イライラだけが更年期のサインではありません。
誤解2: 「汗をかく」=更年期のサイン?
顔のほてりや大量の汗(ホットフラッシュ)は、更年期によく見られる典型的な症状の一つですが、すべての女性に現れるわけではありません。また、これらの症状が必ずしも更年期によるものとは限らず、別の病気のサインである可能性も考慮に入れる必要があります。自己判断せずに、専門医に相談することが重要です。
誤解3: 「一時的なものだから我慢」は危険?
更年期の症状が永久に続くわけではないのは事実ですが、つらい症状が数年にわたって続くことも珍しくありません。 「我慢すればそのうち終わるだろう」と安易に考え、適切な対策を取らないでいると、その期間はQOL(生活の質)が著しく低下し、心身に大きな負担をかけ続けることになります。我慢せずに早めに対策を講じることで、より快適で活動的な日々を送れる可能性が大いにあります。
まとめ
更年期の不調は多岐にわたり、その感じ方には個人差が大きいものです。しかし、その多くが女性ホルモンの変動と、それに伴う栄養状態の変化、そしてストレスに起因している可能性があります。イライラやほてり、疲労感といった症状を単なる「歳のせい」と諦めるのではなく、栄養バランスを見直すなど、積極的に対処することで生活の質を大きく向上させることができます。医師の梶尚志氏が提唱するように、更年期をより快適に過ごすためには、まず自身の体の声に耳を傾け、そして正しい知識に基づいて適切なケアを選択することが何よりも重要です。





