2025年10月3日、欧州宇宙機関(ESA)のエクソマーズ計画の無人周回機トレース・ガス・オービター(TGO)が火星近傍を通過する恒星間彗星3I/ATLASの画像を撮影しました。この特異な天体の発見は、一部で「宇宙人の母船」や「トロイの木馬」といった憶測を呼びましたが、科学者たちはその可能性を明確に否定しています。NASAジェット推進研究所(JPL)のベテラン天体物理学者スラヴァ・トゥリシェフ氏をはじめとする専門家は、3I/ATLASが純粋な自然物であると強調しています。
ESAのTGOが撮影した恒星間彗星3I/ATLAS(中央の白点)
恒星間彗星3I/ATLASの正体:科学的証拠
トゥリシェフ氏が電子メールでの取材で述べたように、3I/ATLASに関する「建造物」説を裏付けるデータは存在しません。確認されているのは、教科書通りの彗星の挙動です。TGOが捉えた画像には、彗星のコマ(頭部の明るい領域)と塵の尾(ダストテイル)がはっきりと写し出されています。その軌道は星間空間からの明確な双曲線を描き、不連続性や「噴射」といった異常な現象は見られません。観測されたわずかな非重力加速も、ガスの噴出(脱ガス)に由来するものと考えられており、これは彗星に一般的に見られる特徴です。これらの科学的観察結果は、3I/ATLASが自然に形成された彗星であることを強く示唆しています。
なぜ宇宙船ではないのか:進化した文明の論理
この特異な恒星間彗星が宇宙船ではないと断言できるのには、純粋に論理的な理由もいくつか存在します。もし、何光年にもわたる時空を超えてこれほど巨大な物体を地球に送り込めるほどの進化した地球外文明が存在するならば、彼らが奇妙な形をした彗星に見せかけて身を隠す必要はまったくないはずです。彼らはロボット探査機を送り込むためにワープ航法のような高度な技術をはるか昔から使いこなしているでしょう。そのような文明が、ちっぽけな太陽系を横断するのに何カ月もかける必要はなく、1996年のSF映画『インデペンデンス・デイ』のように、一瞬のうちに地球に現れることも可能でしょう。
SETIが示す地球外文明との遭遇
地球外知的文明探査(SETI)は、地球外文明が人類と偶然遭遇する場合、その文明は人類よりもはるかに進んだ文明である可能性が高いという論理を数十年にわたり指針としています。SETIは、人類がほぼ同等の科学技術を持つ地球外文明と遭遇する可能性は統計的に非常に低いと主張しています。電波や光、あるいは現時点では想像もできないような別の手段を通して人類とファーストコンタクト(最初の相互接触)する相手の地球外文明は、少なくとも人類より数十万年、あるいは数百万年、あるいは数十億年も進んでいる可能性が高いとSETIは考えているのです。SFテレビシリーズ『スタートレック』に登場する高度知的生命体Qの半分程度の技術力であったとしても、彼らはすでに地球に来ていて、誰もそれに気づかないような形で存在しているかもしれません。彼らの技術力は、人類にはほとんど神業のように見えることでしょう。
結論
恒星間彗星3I/ATLASは、宇宙の広大さとそこに存在する多様な自然現象の驚異を私たちに示しています。その正体は、異星のテクノロジーではなく、科学が解き明かすことのできる壮大な自然の創造物です。科学的探求と論理的思考を通じて、私たちは宇宙の真実に一歩ずつ近づいていくことができるのです。





