トランプ氏、ゼレンスキー氏と「これ以上ない会談」:NATOで変化の兆し

オランダ・ハーグで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の場で、米国のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が50分間ほど会談しました。以前の対立的な雰囲気とは異なり、トランプ大統領はこの会談を「これ以上はない会談」と評価しました。ウクライナが米国の武器購入を提案するなど、両国関係に変化の兆しが見られます。トランプ氏はロシアのプーチン大統領についても言及し、戦争終結に向けた意向を示唆しました。

ハーグで開催されたNATO首脳会議でのトランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領の会談ハーグで開催されたNATO首脳会議でのトランプ米大統領とゼレンスキー・ウクライナ大統領の会談

NATO首脳会議での前向きな会談

トランプ大統領は6月25日(現地時間)、ハーグでのゼレンスキー大統領との会談後、「良い会談だった」と述べました。さらに、「ゼレンスキー大統領は難しい戦争で勇敢に戦っている」と評価し、「今は戦争を終わらせる良い時期」との認識を示しました。トランプ氏は「プーチン大統領と電話し、これを終わらせることができるか見てみる」と話し、ロシアとの対話を通じて事態収拾を図る可能性を示唆しました。

2月のホワイトハウス会談との対比

今回の会談は、今年2月28日にホワイトハウスで行われた両首脳のやり取りとは大きく異なる雰囲気でした。当時の会談では、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対し、「プーチンに対する(ゼレンスキーの)嫌悪のため、私が交渉を妥結するのはかなり難しい」と述べたほか、「米国の軍事支援がなければ、ウクライナは数週間で敗戦したはずだ」「あなたは数百万人と第3次世界大戦をかけてギャンブルしている」など、厳しい言葉を投げかけていました。この時期は、米国がウクライナの希土類開発に参加する内容の鉱物協定締結が難航していた時期でもありました。

ウクライナの武器購入提案と米国の反応

軍事支援が減少傾向にある中、ゼレンスキー大統領は今回の会談で、ウクライナが米国の武器を追加購入すると提案しました。会談後、ゼレンスキー大統領は自身のソーシャルメディアに「何よりも我々の都市と国民、教会、基盤施設を保護するための米防空システムの購入について議論した」「ウクライナはこの装備を購入し、米国武器製造企業を支援する準備ができている」と投稿し、具体的な購入意向を示しました。ゼレンスキー大統領はまた、トランプ大統領に対し、ロシアに停戦圧力を加えるための米国の追加制裁案も要請したと伝えられています。

トランプ大統領は会談後の記者会見で、ロシアへの制裁については直接言及しませんでしたが、(ウクライナが購入に関心を示した)パトリオットミサイルについて「確保するのは非常に難しいが、一部(提供)可能かどうか確かめる」と述べました。さらに、「米国は世界最高の装備を保有していて、カタール基地に発射された14発の(イランの)高性能ミサイルのうち14発すべてが我々の装備により撃墜された」と話し、米国製武器の優位性を強調しました。この発言は、会談直前の6月23日にイランが米国の核施設空襲への報復として行ったミサイル攻撃に言及したもので、米軍の迎撃能力をアピールする狙いがありました。

NATO首脳会議の焦点と共同声明

今回のNATO首脳会議では、トランプ大統領が強く求めていた欧州同盟国の国防費を国内総生産(GDP)比5%に引き上げるという目標設定に、事実上すべての焦点が合わせられました。トランプ大統領はこれを「『ハーグ防衛約束』と呼ばれるものであり、欧州と西欧文明の大きな勝利だ」と称賛しました。その一方で、ウクライナに対する明確な支持表明や新たな支援への言及は、過去の会議に比べて減少しました。共同声明においても、ウクライナのNATO加盟に関する直接的な言及はなく、ロシアに対する表現も「糾弾」ではなく「欧州・大西洋安保に対する長期的脅威」という相対的に穏やかな表現にとどまりました。

ゼレンスキー大統領のその後の動き

ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領との会談を終えた後、フランスのストラスブールにある欧州評議会本部を訪問しました。そこで、ウクライナ侵攻犯罪のための特別裁判所設立を支持する内容の協定に署名しました。来年中の設立を目指して推進されているこの特別裁判所は、ロシアのウクライナ侵略における指導部の責任を追及し、プーチン大統領を含むロシア指導部に対する起訴権限を持つことになるとされています。署名を終えたゼレンスキー大統領は、この場でも「我々は(トランプ大統領との)強い連結が必要だ」と述べ、「欧州と米国の団結が必要であり、そうなれば我々は勝利できる」と強調し、継続的な国際社会の支援と連帯の重要性を訴えました。

まとめ

今回のNATO首脳会議の場でのトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談は、以前の厳しい対立から変化の兆しを見せました。ゼレンスキー大統領が自国の防衛力強化のため米国製武器の購入を提案するなど、積極的な姿勢を示した一方、トランプ大統領も戦争終結への意欲を示しつつ、米国製装備の能力をアピールしました。NATO全体としては防衛費増額に焦点が当たる中、ウクライナは侵略犯罪に関する特別裁判所設立に向けた国際的な取り組みを進めており、米国の支援姿勢や国際社会との連携が今後のウクライナ情勢に引き続き大きな影響を与える見込みです。