進学、就職、結婚、子育てと、人生の節々であらゆる「選択」を乗り越え、残るは悠々自適な老後生活……と、安心するのはまだ早い。60才を過ぎてからこそ、人生最後に先立つものを確保するためには、やり直しのきかない「二択」の問題がいくつもある。そのひとつが老後資金をどこまで貯めるべきかという問題だ。
男性の平均寿命は81.09才、女性は87.14才と、約6年もの差がある。これはあくまでも平均でしかなく、人によっては90才、100才まで生きる場合も少なくない。また、女性ひとりで長生きすればするほど、お金のリスクは増えていく。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんはこう語る。
「いま60代なら、平均寿命を超えて長生きする可能性は高いと考えられます。平均寿命は“いま0才の子が何才まで生きるか”を算出したもの。より現実に近いのは、いまの自分の年齢での『平均余命』。長く生きるほど医療の発達などでより余命は延びるため、平均余命+5年は長生きするとみた方がいいでしょう」
将来的に年金が目減りする可能性が高いうえ、介護期間が延びたり、医療費の自己負担割合が増える恐れもあるほか、家電の故障や冠婚葬祭など、予期せぬ出費に備えようとすればキリがない。60才を過ぎても「預貯金をやめる」という選択肢はない。
「必死に貯める」より「適度に使う」
だが、若い頃のように「生活を切り詰めてでも預貯金する」より「自分のために使う」選択も、時には必要だ。社会保険労務士の井戸美枝さんはこう語る。
「生活に欠かせないものが買えないほど苦しいわけでないのなら、どこかにムダがあるはず。不要な定期購入をしていないか、固定電話やスマホ代などで損をしていないかを見直し、ムダを削って浮いた分だけ貯めておくなど、“守りの貯金”をしておきましょう」(井戸さん・以下同)
人生の最期に「あのときお金を使っておけばよかった」という後悔だけはしてはいけない。
「“どんなに長生きしても、自分の意思で自分のお金を自由に使えるのは75才頃まで”と心得るのもいいでしょう。“老後貧乏になりたくない”と心配ばかりして貯め込んだまま亡くなると、子供がいなければすべて国のものになってしまいます。自分のために計画的にお金を使って結果的に“ゼロで死ぬ”のが理想です」
※女性セブン2025年7月3・10日号