23人に1人――。これは、妻との間に初めての子どもが生まれた男性のうち、45歳以上の男性が占める割合です。いまだ多数派とは言えませんが、20年前の「67人に1人」と比較すると、その数は格段に増加しています(厚生労働省「人口動態統計」2003年、2023年報に基づく筆者集計)。アラフィフからの子育てと聞くと、経済面や体力面での負担が大きいといったネガティブな側面を想像する方も少なくありません。しかし、実際にその人生を選んだ当事者は、どのような思いを抱えているのでしょうか。本連載では、45歳を過ぎてから「パパ」となった男性たちの、率直な子育て体験談を深掘りしていきます。
本稿では、49歳で第一子を授かった剱持さん(現在61歳)にお話を伺った内容の後編をお届けします。
DINKsを予定していた夫婦に訪れた「予想外の妊娠」
「結婚を決めた時、妻とはお互いの年齢を考慮して、『子どもは考えずに、二人で楽しく過ごそうね』と話し合っていました。いわゆるDINKs(Double Income No Kids:共働きで子どもを持たない選択をした夫婦)として生きていくものだと、漠然と考えていたんです」と剱持さんは語ります。
しかし、その予想に反して、思いがけず妊娠が発覚しました。全く予期せぬ事態に直面し、正直なところ「びびっちゃったんですよね」と当時の心境を吐露しました。親が高齢になるほど、遺伝的な疾患を持つ子どもが生まれる確率が一般的に高まると言われています。その現実を受け止め、覚悟を持って子どもを迎える自信がすぐに持てず、剱持さんは深く悩みました。実際に、妊娠中の胎児に染色体異常などの遺伝的な疾患がないかを調べるための羊水検査を受けることも検討しました。
高齢出産に伴う不安、そして羊水検査の決断
高齢での妊娠は、親にとっては多くの不安が伴います。剱持さんも例外ではなく、遺伝的な疾患のリスクについて真剣に向き合いました。検査を検討する中で、「あの検査はお腹に針を刺すから、母子ともにリスクが伴うんですよね。当時の僕はそのリスクを十分に認識しておらず、自分の心配ばかりしていたんです」と、申し訳なさそうに当時の自分を振り返りました。自身の不安ばかりに目が向いてしまっていたことへの後悔が滲みます。
49歳で第一子を授かった剱持さんの当時の写真、高齢での妊娠に戸惑いを感じていた
検査結果から出産へ、そしてパパになった喜び
幸いにも、羊水検査の結果は陰性でした。そして2013年、剱持さんが49歳の時に、待望の長男が無事に誕生しました。元気な産声を聞いた時、「本当に嬉しかった」と、その喜びを噛み締めました。
「子どもを持つことを一度は諦めていましたが、40代になってから漠然と『家庭を持ちたい』という思いが芽生え始め、心の奥底では『一人でいいから、自分の子どもに会いたい』と強く願っていたんです。子どもが生まれたことで、それが人生で一番の望みだったのだと改めて気づかされました」と語る剱持さん。予期せぬ妊娠、そして高齢での出産という決断を通して得られた、かけがえのない喜びと人生観の変化を静かに語ってくれました。
参考文献:
厚生労働省「人口動態統計」2003年、2023年報