来年度からの私立高校無償化に向けた議論が進む中、無償化に反対する大学生らのグループが6月26日、文部科学省で記者会見し、ネットで集めた無償化に反対する署名が3万6000筆に達したと報告するとともに、「公立高校の廃校が増える懸念などがあり、まず公立高校の環境改善などを優先して進めるべきだ」などと訴えた。
記者会見したのは、私立高校無償化に反対する署名活動の発起人で、大学1年生の秀島知永子さんら。秀島さんらは、今年2月に3党合意で私立高校の授業料無償化の方針が決まったことについて、「予算成立のため道具に使われた過程に違和感があり、公立学校からの意見が含まれていないことにも危機感を持った」とネットで署名活動を始めた経緯を説明。3月から集め始めた署名は、6月18日までに3万6000筆余りに達したことを報告した。
署名への協力を求める文書では、公立高校では教員不足や教員の過酷な労働環境、校舎の老朽化など課題が山積しており、こうした課題解決を優先すべきと指摘するとともに、私立高校の多くは都市部にあり、教育格差が広がることが懸念されるとして公費を投じることに疑問を示している。
その上で▽私立高校の授業料無償化の範囲を、公立高校と同水準に据え置くこと▽公立学校の質向上を行政として責任を持って取り組むこと▽高校生に対する奨学金制度を拡充すること――などを求めている。
秀島さんは「署名への賛同は数千位と予想していたが、3万6000筆を超えて驚いている。財源やマンパワーも限られる中で、公立学校の教育の質を上げることに国の予算を投入すべきであり、それが親の経済格差による教育格差の是正にもつながると考えている」と強調した。
会見に出席した長野県の高校1年の森栗之介さんは「地方の公立高校の生徒として、教育には地域差があると感じている。一律の無償化だけが先行して、地方の公立高校が切り捨てられないか危機感を持っている」と話した。
同じく同席した高校3年の篠原一騎さんは「都市部と地方では、私立高校でも事情がかなり異なり、一律に公費を投入することに違和感がある。むしろ給付型奨学金を拡充して、誰もが使える環境づくりなどを進めるべきだ」と訴えた。
秀島さんらは今後も署名活動を続け、私立高校の無償化に向けた議論の行方を見ながら今後の活動方針について考えたいとしている。
山田 博史 教育新聞 報道記者