データセンターは、現代デジタル社会の基盤となる重要なITインフラです。膨大な情報を保管・処理し、クラウドサービスや生成AI、IoTなどを支えています。総務省「令和6年版情報通信白書」によれば、国内市場は拡大の一途をたどり、2027年には4兆円を超えると予測されています。中でも千葉県印西市は、都心へのアクセスや強固な地盤といった条件からデータセンターの国内有数の集積地、「データセンター銀座」として知られています。しかし近年、新たな建設計画、特に千葉ニュータウン中央駅前での動きに対し、住民からの反対意見が寄せられています。「駅前に人が集まらない施設は街に資するのか」といった声が上がり、データセンターと地域社会の共存が課題となっています。
都心に近い街並みに調和するデータセンターの外観イメージ(生成AIによる作成)
なぜ印西市にデータセンターが集まるのか
印西市がデータセンターの集積地となった背景には、地理的な優位性と長期的な都市基盤整備があります。北総線や外環道、圏央道の整備により、都心からのアクセスが大幅に向上。また、堅牢な地盤は地震などの自然災害リスクを低減するため、企業の電算センターやバックアップ拠点として適地とされました。データセンターの立地は2000年代初頭から始まり、郵政省(当時)や大手金融機関などが先鞭をつけました。これに加え、印西市と千葉県は企業誘致策として、優遇税制や助成制度を積極的に展開。これがデータセンター事業者側のニーズと合致し、集積が加速しました。
印西市の財政を支える「固定資産税51%」の重み
データセンターの集積は、印西市の財政に大きな恩恵をもたらしました。2024年度の市税収入に占める固定資産税の割合は51.0%に達し、税収の過半を占めます。固定資産税収は2020年度の101億6300万円から2024年度には154億9500万円へと増加し、その増加額は45億600万円に及びます。この税収増が、印西市の財政基盤を強固にし、財政力指数は1.04と全国平均を大きく上回ります。財政力指数は自治体の財政的な自立度を示す指標で、1以上は自立的な運営が可能であることを意味します。「データセンター銀座」が集積効果として、印西市の財政を強力に支えているのです。
このように、データセンターの集積は印西市に多大な財政的恩恵をもたらしました。しかし同時に、駅前などの生活空間に近い場所での建設計画に対する住民の懸念も高まっています。施設特性上、直接的な人の流れや雇用が少ない点が「地域への貢献」として見えにくいという声に繋がり、「情報インフラ」と「都市機能・住民生活」の間の課題を浮き彫りにしています。印西市の事例は、重要なインフラと地域社会がどう共存していくかという問いを投げかけています。