世界的に人気を博すストリーマーのIShowSpeed氏が、OpenAIの動画生成AIモデル「Sora 2」によって自身の姿を模倣したAI生成動画が制作されていることに、強い懸念を表明しました。この問題は、AI技術の急速な進化がもたらす肖像権や著作権、倫理的な課題について、世界中で議論が活発化している現状を浮き彫りにしています。
10月19日に行われた自身のライブ配信中、IShowSpeed氏は「Sora 2」で生成されたディープフェイク動画を視聴。その内容には、彼が次に訪問する予定の国を誤って伝えたり、自身の性的指向を誤認させたりするものも含まれていました。これに対し、彼は「これはオフにする。公式にもうやめさせる」と述べ、自身の肖像がAIによって不適切に利用されることへの強い不快感と停止を求める意向を示しました。「Sora 2」は、著作権や肖像権に関してオプトアウト方式で運用されているため、本人が明確に反対を表明しない限り同意と見なされる可能性があります。IShowSpeed氏の発言は、この仕組みに対し、自身の肖像利用を停止させようとするものと考えられます。
世界的人気ストリーマー「IShowSpeed」とは
IShowSpeedことダレン・ジェイソン・ワトキンス・ジュニア氏は、ゲーム実況やIRL(In Real Life、実生活配信)など多岐にわたるコンテンツを展開し、世界的な人気を集めるストリーマーの一人です。2016年にYouTubeチャンネルを開設後、『NBA 2K』や『Fortnite』といったゲーム実況からキャリアをスタートさせました。2021年頃からは、そのオーバーリアクションな実況スタイルが視聴者の注目を集め、現在ではYouTubeチャンネル登録者数4,500万人を超える人気を誇っています。近年では、世界各国を訪問し、その様子をライブ配信する「海外訪問配信」を通じて、各地の文化を国内外の視聴者に紹介する活動も積極的に行っています。
AI生成動画に懸念を表明した人気ストリーマーIShowSpeed氏
OpenAIの「Sora 2」がもたらす精巧な動画生成と倫理的・法的議論
OpenAIが提供する「Sora 2」は、テキストや音声の指示に基づいて、極めてリアルな動画を生成できる革新的なAIツールです。現在、一部のクリエイターに招待制で公開されています。その精巧な生成能力は目覚ましい一方で、「Sora 2」によって生成されたAI動画の中には、著作権や肖像権に抵触する恐れのあるものが確認されています。特に著名人や故人の姿をリアルに再現したディープフェイク動画の急速な拡散は、深刻な社会問題として認識されつつあります。
既に10月17日には、OpenAIが故マーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏を再現したAI生成動画を不適切として一時停止する措置を取りました。また、日本政府も国内のクリエイターが権利を保持する漫画やアニメ作品の動画がAIによって生成される可能性に対し懸念を表明するなど、AIによる生成表現を巡る倫理的・法的議論は世界的に拡大しています。さらに、生成AIを巡っては、AIによって生成された女優「ティリー・ノーウッド」がデビューし、全米俳優組合(SAG-AFTRA)がこれを非難するなど、実在する人物とAI生成画像の境界に関する議論も深まっています。
IShowSpeed氏の今回の懸念表明は、個人レベルでの肖像権保護の重要性と、急速に発展する生成AI技術の社会実装における倫理規定の必要性を改めて提示しています。





