『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』地上波初放送に騒然…フジテレビの「ヤバすぎ」編成、波紋広がる理由

7月1日、フジテレビが映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の地上波初放送を発表したことが、一部で波紋を広げている。同日、『ゲゲゲの鬼太郎』公式X(旧ツイッター)が明かした情報によると、7月12日の『土曜プレミアム』枠でオンエアされる予定だ。同作は、アニメ第6期をベースに鬼太郎の誕生の謎に迫るストーリーで、第47回日本アカデミー賞で『優秀アニメーション作品賞』を受賞するなど、高い評価を受けている。

ところが、この発表に対し、X上では「地上波でやるの!?!? 正気か!?」「結構話がエグいんだが大丈夫?」といった驚きや不安の声が続出している。

映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」キービジュアル。フジテレビでの地上波放送がPG12内容で波紋。映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」キービジュアル。フジテレビでの地上波放送がPG12内容で波紋。

地上波放送でなぜ波紋が?PG12指定の衝撃内容

なぜ、高評価を得ている作品の地上波初放送がこれほど騒がれているのか。その理由は、同作に含まれる描写にある。

映画ライターは「同作は、残酷な暴力描写も含まれている作品ですからね」と語る。2023年11月、一般財団法人 映画倫理機構(映倫)の公式Xは「『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』簡潔な殺傷・出血の描写がみられ【PG12】区分に指定します」と投稿し、注意喚起していた。このことからもわかる通り、同作には一部で衝撃的な描写が含まれている。また、作中で血縁をめぐる描写に、倫理的に複雑な関係性が示唆される場面があるなど、センシティブな要素も存在する。

同作には、12歳未満の鑑賞に保護者の助言や指導が必要とされる『PG12』が指定された通常版と、15歳未満の入場・鑑賞を禁止する『R15+』指定の『真生版』が存在する。今回フジテレビが放送するのは通常版だが、それを地上波のゴールデン帯でノーカット放送するというのは異例であり、驚きが集まるのも当然と言えるだろう。

フジテレビが「攻め」の編成を敢行する理由

今回のフジテレビの強気とも取れる編成には、複数の背景が推測される。芸能プロ関係者はその理由についてこう語る。

まず、原作者である水木しげるさんの節目にあたることが挙げられる。2022年は水木さんの生誕100周年、そして今年は没後10年にあたる。これに合わせて、8月からは完全新作の舞台『ゲゲゲの鬼太郎』も上演される予定だ。このような作品を取り巻く機運の高まりが、放送の後押しになった可能性はある。

さらに、フジテレビには過去にPG12指定のアニメ映画をゴールデン帯で放送した前例がある。『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』もPG12指定だったが、高い視聴率を獲得している。こうした成功体験が、今回の編成の判断材料の一つになったと考えられる。

しかし、最も大きな理由として指摘されるのは、フジテレビを取り巻く現在の状況だ。中居正広さんと元女性アナウンサーの性加害トラブルに端を発し、フジテレビにはまだ完全にスポンサーが戻っていない状態にあるという。この状況が、かえって編成における「スポンサーへの配慮」といった縛りを減らし、よりリスクを取って話題性のある番組作りに踏み切る動機になっていると推測できる。コンプライアンスの問題も重要だが、それ以上に、視聴者を惹きつける質の高い、あるいは話題性の高いコンテンツを放送しないと視聴率や人気は回復しないという危機感があるのかもしれない。

東京都お台場にあるフジテレビ本社ビル。中居正広氏関連トラブルが報じられる中、異例の地上波編成を行った背景を示す。東京都お台場にあるフジテレビ本社ビル。中居正広氏関連トラブルが報じられる中、異例の地上波編成を行った背景を示す。

異例の試みは吉と出るか、凶と出るか

PG12指定作品のノーカット地上波放送という異例の編成。この「攻め」の判断が、視聴率獲得や話題性向上に繋がり、フジテレビの立て直しに寄与するのか。それとも、内容を巡る批判や波紋が広がり、逆効果となるのか。今回の試みが吉と出るか、凶と出るか、放送当日とその後の反応が注目される。