韓国社会揺るがすAIフェイク動画の脅威と高齢者対策

韓国で人工知能(AI)を用いて生成された偽のドキュメンタリー動画、AIフェイク動画の拡散が深刻な社会問題となっています。その映像はまるで本物のニュースや映画のように精巧で、虚偽と見抜くのは困難です。YouTubeやFacebookなどの主要プラットフォームを通じて急速に広まり、特にデジタル情報に不慣れな高齢者層がターゲットとなり、記憶力低下や情報リテラシー不足につけ込む形で、深刻な混乱を招いています。数十万から百万回を超える再生数を記録する動画もあり、その影響力は無視できません。

韓国で拡散中のAIフェイクドキュメンタリー動画の代表例、「人生知恵の湖」チャンネルの画面韓国で拡散中のAIフェイクドキュメンタリー動画の代表例、「人生知恵の湖」チャンネルの画面

センセーショナルなタイトルで再生数稼ぎ

これらのAIフェイク動画は、視聴者の好奇心や関心を引きつけるため、常軌を逸したセンセーショナルな、あるいは倫理的に問題のあるタイトルが付けられています。例えば、「32人の女性と関係を持った韓国青年」という動画は70万再生、1万2000件以上の「いいね」を獲得。内容が作り話であるにも関わらず、「感動した」「人口問題の研究対象だ」といった、動画を真に受けたと思われるコメントが多数寄せられています。他にも、「70代のおばあちゃんと20代黒人青年の美しい同棲」や「52歳の義母と26歳婿の衝撃的妊娠」といった刺激的なタイトルの動画が高再生数を記録。一部には「義兄と義妹」「大学生と友人の妻」など、社会的なモラルに反するシナリオで論議を呼び、100万再生を超える動画も存在します。これらは全てAIによる合成画像とナレーションで構成された虚偽のコンテンツです。

規制の遅れと情報リテラシー向上の喫緊の課題

こうした悪質なAIフェイク動画に対して、現行法による明確な規制は十分ではありません。例えば名誉毀損など、特定の犯罪に該当しない限り、法的対応が困難なケースが多くあります。さらに、動画の制作者の多くが匿名でアカウントを運営し、広告収入などで収益を得ているため、問題の追跡や効果的な摘発が追いついていないのが現状です。専門家は、この状況に対処するため、特にAIコンテンツに不慣れな高齢者向けの、より踏み込んだ教育・啓発活動を含む包括的な対策が急務だと主張しています。プロバイダーやプラットフォーム運営者は、誤情報や虚偽の内容を含む動画への警告表示や削除基準を強化する責任があります。同時に、政府・地方自治体が連携し、国民全体、特に高齢者の情報リテラシーを組織的に向上させる教育プログラムを推進することが強く求められています。

韓国で蔓延するAIフェイク動画は、そのリアリティとセンセーショナルさで高齢者を中心に多くの混乱を招いています。現行の法的枠組みでの規制は難しく、匿名性も問題を複雑化させています。この問題に対処するには、プラットフォーム側の対策強化と、高齢者向けの情報リテラシー教育推進が不可欠です。社会全体での取り組みを通じて、虚偽情報による被害を防ぐ必要があります。

(c)KOREA WAVE/AFPBB News
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