北朝鮮「核関連汚染水」放出疑惑、韓国政府が全国10地点で緊急調査へ

北朝鮮の核関連施設からの汚染水放出疑惑が広がる中、韓国政府は国民の懸念に対応するため、今月4日から全国10地点で関係省庁合同の実態調査を開始しました。リアルタイムで測定される放射能数値は現在正常範囲内ですが、SNSなどでは放射能汚染への懸念が広がっており、政府として積極的な対応に乗り出した形です。

韓国政府、全国10地点で緊急水質調査を開始

韓国統一省は3日、原子力安全委員会、海洋水産部、環境部、国家情報院などの関係省庁による会議を開催し、原子力安全委員会・海洋水産部・環境部の合同による特別実態調査の実施を決定しました。調査対象となるのは、北朝鮮地域から流れる礼成江河口に最も近い江華島や漢江河口を含む計10地点です。これらの地点で採取された試料は、ウランやセシウムといった放射性物質および重金属による汚染がないか詳細に分析されます。分析には約2週間を要し、その後結果が公表される予定です。

放射能汚染水放出疑惑を受け、韓国政府が水質調査のため試料を採取する様子放射能汚染水放出疑惑を受け、韓国政府が水質調査のため試料を採取する様子

汚染水放出疑惑の背景と経緯

今回の疑惑は、先月、ある衛星写真を分析した専門家が北朝鮮専門メディア「デイリーNK」を通じて指摘したことに端を発します。この専門家は、北朝鮮の黄海北道平山にあるウラン工場沈殿池から排水が放流された可能性があると述べました。特に、昨年10月に撮影された衛星写真と比較すると、沈殿池からの排水量が増加しているように見えるとのことです。この排水路は小さな河川を通じて礼成江とつながり、さらに江華湾を経て西海(黄海)に至るため、江華島や西海の一部が放射能物質で汚染されているのではないかとの懸念が広がっています。

過去の事例と現状の放射線モニタリング

過去にも、2019年に平山のウラン工場からの排水に対する懸念が高まったことがあり、当時韓国政府が漢江と西海の水質状況を調査しましたが、汚染は確認されませんでした。また、原子力安全委員会は全国244カ所に環境放射線自動検査機器を設置しており、平均15分ごとにリアルタイムで測定を行っています。原子力安全委員会は1日、全国全ての地域で放射能の数値は正常範囲内であったと発表しています。

調査体制の強化と今後の対応計画

韓国政府は今回の特別調査にあたり、調査地点をこれまでの6地点から10地点に増やし、調査対象物質もウラン、セシウムに加えて重金属にも拡大しました。当面は毎月、北朝鮮の排水放流に関連する検査を実施すると同時に、より恒常的な定期モニタリングシステムを構築する計画も進めています。韓国政府当局者は、「今後も関係省庁による協議体を引き続き運営し、国民が懸念する事案に対しては直ちに対応したい」と述べた上で、「関係機関が協力しながら、北朝鮮のウラン精錬工場を含む核開発の動向を綿密に注視し、分析している」と説明しました。


Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/41df4d2047d1db4574cc83a9a934cbb726a431cf