72歳で支店長に就任!岡三証券、久下美恵子氏の異例キャリアが示す「生涯現役」の力

内閣府の調査によれば、「働けるうちはいつまでも」と答える人が近畿地方で26.5%に上る中、その精神を体現するような人事が準大手証券の岡三証券から発表されました。2025年11月1日、大阪市にオープンした新店舗「Auroraプラザ」の支店長に、御年72歳の女性、久下美恵子氏が就任したのです。顧客のウェルスマネジメント(資産管理)に重点を置くこの新拠点において、3児の母であり6人の孫を持つ「肝っ玉おばあちゃん」がトップを務めることは、多くの注目を集めています。この人事は、シニア世代の活躍と女性のキャリア形成に新たな光を当てるものと言えるでしょう。

37歳で嘱託社員からスタート:異色のキャリアパス

久下氏のキャリアは、一般的な証券業界のそれとは一線を画しています。彼女が岡三証券の門を叩いたのは37歳、1990年のことでした。それまで金融業界とは全く無縁で、パン屋で働きながら子育てに励む専業主婦でした。最初のステップは1年契約の嘱託社員という立場で、顧客と直接話すために必要な証券外務員の資格取得から始めたと言います。この遅咲きのスタートが、彼女の異例な成功物語の序章となりました。

史上初の昇進:課長、そして支店長へ

入社から13年後、久下氏は正社員となり、6〜8人の部下を率いる課長に昇進します。これは岡三証券において、嘱託社員から課長になった初めてのケースでした。ITバブル崩壊後の厳しい時代、顧客からの厳しい声に直面する同僚や後輩を支え、自らも客先へ出向いて説明を重ねることで、失われた信頼を取り戻し、5億円、10億円という新たな預かりを増やしていきました。この実績が評価され、2003年には千里支店の支店長に就任。これもまた、嘱託出身者初の支店長という快挙でした。夫からは「美恵子が支店長なんて岡三証券は大丈夫かいな」とからかわれたというエピソードも、当時の異例ぶりを物語っています。

岡三証券のHPより、久下美恵子氏が支店長を務める「Auroraプラザ」の外観岡三証券のHPより、久下美恵子氏が支店長を務める「Auroraプラザ」の外観

その後も大型支店で支店長を務め、2013年に定年を迎えますが、彼女のキャリアはここで終わりませんでした。定年後は若手社員教育を担当する管理職として活躍し、さらに2018年には65歳で監査役に就任。会社への恩返しと捉え、新たな職責を引き受けました。

定年後も貢献:監査役、そして再度の支店長就任

今年6月、監査役としての任期を終え、いよいよ会社勤めに終止符を打つ予定だった久下氏。しかし、退任の挨拶に訪れた社長から返ってきたのは、まさかの支店長就任要請でした。新店舗「Auroraプラザ」は、スタッフが時間に縛られず、顧客と長期にわたって信頼関係を築き、サポートする体制を特徴としています。まさに「人生100年時代」における、豊富な経験と知識を持つシニア社員の価値を最大限に活かす場と言えるでしょう。

72歳とは思えないほど活力にあふれる久下美恵子氏の笑顔72歳とは思えないほど活力にあふれる久下美恵子氏の笑顔

久下美恵子氏のこの新たな挑戦は、年齢にとらわれずキャリアを築き続け、社会に貢献する「生涯現役」の生き方を象徴しています。彼女のこれまでの経験と、新たな営業戦略を担う手腕に、今後ますます注目が集まることでしょう。


情報源:
「週刊新潮」2025年11月20日号 掲載 (新潮社)
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/2b79dca92d5d074ee008e62bf6a61ebc09b1895d