新型コロナ「レプリコンワクチン」体験談:「1年効果」と根強い「陰謀論」を検証

私は昨年11月、Meiji Seikaファルマが製造する新型コロナウイルス感染症向けのレプリコンワクチン「コスタイベ」を接種しました。このワクチンは、従来のmRNAワクチンと比較して、人体の免疫系が標的とするSタンパク質を生成する期間が長いという特徴があります。これにより、効果の持続期間が長くなるとされており、mRNAワクチンの約半年に対して、レプリコンワクチンは約1年間効果が期待されています。接種から約8ヶ月が経過した現在の状況について述べます。

当時、さまざまな情報を調べた上で、「これはあえて人柱となる価値がある」と判断し、接種に踏み切りました。現状、私自身には健康被害はまったく出ていません。何よりも、「1年間効果が持続する」という安心感は非常に大きいです。私個人の体験は単なる一例にすぎませんが、ワクチンの健康被害は確率的なものであり、新型コロナウイルス感染症に感染して長期にわたる後遺症(Long Covid)を含む重篤な健康被害を受ける確率よりも、その発生率ははるかに低いと考えられています。

人生は確率の海、リスク管理の視点

人生はまるで確率の海を泳ぎ回るようなものです。だからこそ、自分で選択肢を選べる状況においては、より得をする確率の高い方を選ぶべきだと考えています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは「終わった」わけではありません。ウイルスが社会の中に定着してしまった状態です。現在の新型コロナ感染症は、1960年頃の結核が社会に与えていた被害と同程度のインパクトを与え続けています。年間約3万人の死者数は、交通事故による死者数の約10倍にも及びます。間接的なコロナ関連死(感染・発症が既往症を悪化させるなど)や、長期にわたる後遺症を考慮すれば、「コロナが明けた」という認識が誤りであることはすぐに理解できます。

そのため、私は現在でも外出時にはマスクを着用しています。最近は混雑した電車内でもマスク着用者が少数派になりましたが、私の感想は「何と愚かなことか」というものです。このような脅威の評価は、発症確率と被害の程度の積で影響を見積もるのが適切です。Long Covidは、場合によっては一生続く可能性すらあります。後遺症の発症確率がたとえ低かったとしても、一度発症した場合の被害が甚大であれば、その危険性は無視できません。マスクのような低いコストで予防できるのであれば、そのリターンは圧倒的に大きいと言えます。新型コロナウイルス感染症は、今も新たな変異株が登場し、社会で猛威を振るっています。私は今年の秋も、最新のウイルス株に対応したレプリコンワクチンの接種を受けるつもりです。

根強く残るワクチン「陰謀論」

ところで、ワクチンについては、「実際には役に立っていない」「むしろ毒である」といった意見が根強く流布しています。いわゆる反ワクチンの陰謀論です。1796年にエドワード・ジェンナーが世界初のワクチンを少年に接種してから、今年で229年が経過しました。この長い歴史の中で、様々な感染症に対するワクチンが開発され、多くの人々の命を救ってきました。にもかかわらず、「ワクチンは毒だ」とする陰謀論は後を絶ちません。

ウイルスと人々、情報が混ざり合う様子を描いたイラスト。新型コロナウイルスやワクチンに関するリスク、陰謀論といったテーマを示唆する。ウイルスと人々、情報が混ざり合う様子を描いたイラスト。新型コロナウイルスやワクチンに関するリスク、陰謀論といったテーマを示唆する。

陰謀論はさらに、「なぜ毒であるはずのワクチンをこれほど広めようとするのか?それは多数の人に接種することで得をする勢力がいるからだ」と主張を展開します。陰謀論のバリエーションは多岐にわたります。「製薬会社が儲けるために無意味で有害なワクチンを打たせている」といった主張から、「人間には病気に対応する自然免疫が備わっている。ワクチンは人間本来の機能である自然の免疫を弱めてしまう」というもの、さらには「ワクチンは、人口を減らそうとしている○○の陰謀だ」という極端なものまで存在します。この「○○」には、ディープステート(世界を裏で操る影の政府)や、特定の富豪、あるいは古典的なものでは特定の民族などが挙げられます。

結論:科学と歴史が示すワクチンの意義

私のレプリコンワクチン接種体験からは、現時点で懸念される健康被害は認められず、長期的な効果への期待が得られています。新型コロナウイルス感染症が依然として社会に大きな影響を与え続ける中で、科学的なデータに基づいた確率論的なリスク評価と、マスク着用のような低コストで高いリターンが得られる対策は依然として重要です。ワクチンの歴史が200年以上にわたり人類を感染症から守ってきた事実と向き合うとき、根拠のない陰謀論がいかに現実と乖離しているかが浮き彫りになります。信頼できる情報に基づき、冷静に判断することが求められています。