高止まりが続くコメの値段は、これからどうなるのか。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「鈴木農水大臣は『需要に応じた生産』という減反強化策を食糧法に盛り込もうとしている。減反が続く限り価格は上がり続け、消費者がコメを買えなくなる。さらに生産量を減らさないといけない(減反)悪循環が起こり、日本の食料安全保障は危機的状況に陥るだろう」という――。
【画像】平成25年12月4日、国家基本政策委員会両院合同審査会で党首討論を行う、安倍晋三内閣総理大臣
■食糧法を改正し減反強化を法定化
農水省は減反を強化し、法定化しようとしている。次は12月19日に行われた記者会見における鈴木農水大臣の発言である。
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食糧法改正案の中に、この「需要に応じた生産」というのを位置付けるということでありますが、この「需要に応じた生産」は、各産地や生産者が主食用米の需給動向等を踏まえて、自らの経営判断によって作付けを行うということを意味しております。政府は需要に応じた生産を促進すること、そして生産者は需要に応じた生産に主体的に努力をするということなどの理念・責務を盛り込むことを検討しております。生産調整の規定もあるわけですが、形骸化をしておるわけなので、削除することになります。これが事実上の減反ではないかという、ちょっと私自身もよく分からないご指摘もあるわけなのですが、「需要に応じた生産」とは、需要が増える場合は、それに応じて生産を増やすことになります。ですから、いわゆる減反政策を意味するものでは全くありませんし、この生産調整という文言も全て削除させていただくということになろうかと思います。(引用者注:文意を損なわない範囲で短縮した)
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クイック・コメントをしよう。
農水省も需要の見通しを誤るのに、個々の生産者が市場の需要を把握することはできない。また、鉄鋼業やビール産業などと異なり、農業の場合は、市場全体の供給量に比べて個々の生産者の生産量はわずかなので、市場の動向を意識して生産することはない。個々の生産者が意識するのは市場で決まる価格だけである。農業について「生産者が需要に応じた生産に主体的に努力をする」ことは、経済学からありえない主張である。大学1、2年の教養課程で使う経済学入門書の最初の部分を理解していれば、このような主張をすることはないと思われる。
また、自身のコメの品質に自信がある多くの農家が主体的に努力し大幅に生産を増やし、その結果全体の生産量も増え米価が下がることは、「需要に応じた生産に主体的に努力をする」ことと農水省は認めないだろう。認めるのは、米価を下げない減反だけだ。





