ブラジルのルラ大統領は先日、ドナルド・トランプ米大統領が発表したブラジルからの輸入品に対する50%の関税措置に対し、対抗措置を取る考えを明確に示しました。これは、トランプ氏が主張する「米国はブラジルに対し貿易赤字を抱えている」という認識を誤りであると指摘すると同時に、8月1日にこの高率関税が発効した場合、「同等の措置」で報復することを警告したものです。米ブラジル間の貿易摩擦は、新たな局面を迎えています。
関税引き上げの背景と経緯
トランプ大統領は7月9日、ルラ大統領に宛てた書簡で、8月1日からブラジルからの輸入品に対して50%の関税を課す意向を正式に伝えました。この税率は、4月に発表されていた10%から大幅に引き上げられたものです。トランプ政権は、「米国第一主義」の通商政策を掲げ、特定の国との貿易不均衡や輸入増加に対して、追加関税を課すことで国内産業を保護する姿勢をしばしば示してきました。今回のブラジルに対する措置も、その政策の一環とみられています。
ブラジル大統領の強い反発と「相互主義」
ルラ大統領は、この米国による一方的な関税引き上げの動きに対し、即座に強く反発しました。大統領は「トランプ氏は誤解している。米国はブラジルに対し貿易赤字を抱えていない」と述べ、米国側の認識の誤りを指摘しました。さらに、「(関税が発効すれば)同等の措置を取る」と明言し、米国がブラジル製品に高率関税を課す場合、ブラジルも米国製品に対して同様の報復関税を課す用意があることを示唆しました。「相互主義」に基づいた対応を取ることで、自国の利益を守る姿勢を鮮明にしました。
ブラジルのルラ大統領、米国による50%関税の示唆に対し記者会見で反論
米ブラジル貿易の実態
ルラ大統領が主張する「米国はブラジルに対し貿易赤字を抱えていない」という点は、実際の貿易統計データからも裏付けられることが多いです。品目によってはブラジルからの輸出が上回るものもありますが、全体としては米国がブラジルに対して貿易黒字、特にサービス貿易において黒字を計上している年が多く見られます。トランプ大統領がどのデータ(例えば特定の品目のモノの貿易赤字だけなど)を根拠に関税を示唆したのかは明確ではありませんが、ブラジル側は全体的なバランスを見て、米国側の主張を否定している状況です。
米大統領の反応と今後の展望
こうしたブラジル側の強い姿勢に対し、トランプ大統領は記者団に対し、ルラ大統領と「いつか話すかもしれないが、今は話していない」と語るにとどまりました。これは、現時点ではブラジルとの緊急の協議は予定していない、あるいはブラジル側の反発を静観する構えとも受け取れます。8月1日の関税発効期限が迫る中、両国間の緊張は高まる可能性があります。もし実際に50%の関税が課され、ブラジルが報復措置を取った場合、両国の経済関係に大きな打撃を与えるだけでなく、他の国々にも影響が波及する懸念があります。世界経済の安定にとっても、今後の展開が注視されます。
出典:ロイター通信