参院選後の国会運営は?石破政権の試練と「何も決まらない」リスク

石破政権は内閣支持率の低迷が続く中、参議院選挙に突入しようとしています。現在、衆議院では与党が過半数を割り込む少数与党状態ですが、今回の参院選でさらに議席を減らせば、いよいよ衆参両院で過半数割れという厳しい局面に追い込まれます。もしこの状況になった場合、国会はどのように機能するのでしょうか?国民生活にも影響を及ぼしかねない、国会停滞の可能性を探ります。

参議院選挙後の国会運営が焦点となる石破茂首相参議院選挙後の国会運営が焦点となる石破茂首相

焦点は参院での過半数維持、与党の50議席獲得なるか

今回の参議院選挙(今月20日投開票)における最大の焦点は、与党である自民・公明両党が改選議席で50議席を確保できるかどうかです。参議院の総議席は250で、過半数は126議席。自公両党の非改選議席は75議席ですから、改選で50議席以上を獲得すれば、参議院での多数を維持できます。逆に50議席を下回ると、衆議院に続き参議院でも少数与党に転落することになります。

過去の参院選では、自民党は2022年の1人区で28勝4敗と圧勝した実績があります。しかし、そのわずか3年後となる現在、政治情勢は大きく変化しました。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「昨秋の衆院選に続き、今年6月の東京都議選でも惨敗と、有権者の自公離れが顕著です。特に都議選では自民は1人区で1勝もできなかった。野党に競り負けているんです」と指摘します。この傾向が参院選の1人区でも続けば、1989年の36議席、2007年の37議席といった過去の参院選における大惨敗並みの結果となり、公明党の議席と合わせても50議席に届かないという大敗北の可能性も十分にあり得るとの見方を示しています。

衆議院「少数与党」ですでに直面する国会運営の苦難

仮に参議院で多数を維持できたとしても、石破自民党はすでに衆議院での少数与党により、国会運営に苦慮しています。自民党関係者は、一見、与党提出法案の高い成立率(59本中58本成立)をもって与党ペースに見えた今通常国会も、その実態は大きく異なると嘆いています。「衆院では少数与党とあって、野党の助けを借りないと法案を可決できない。そのため、常に野党の顔色をうかがっては注文に応えなくてはいけないというケースが常態化しました。その象徴が与党提出法案の20%(12本)に野党からの修正が入ったという事実です。これでは、まるで与党は野党のご用聞きです」と語る通り、野党との妥協なしには何も進まない状況です。国会対策の大ベテランである森山裕幹事長も、野党との修正協議の難しさに「もう何回もやれる話ではない」と漏らすほどでした。

衆参両院「少数与党」化が招く国会停滞のリスク

衆議院での少数状態だけでもこれだけ国会運営にてこずっている中で、もし参議院でも少数与党に転落すれば、その厳しさは倍加します。これまでは、たとえ衆議院で野党が結束して法案を通そうとしても、参議院で多数を持つ自公両党はその野党案を否決できるという圧力をかけることが可能でした。しかし、参議院でも過半数を割れば、この交渉力を失います。野党との妥協点を探る作業はさらに手間暇のかかるものとなり、通常国会にかけた何倍ものエネルギーを要することになります。野党修正案の検討や関係者との合意形成が難航し、結果的に審議が不十分なまま多くの法案が積み残され、「何も決まらない国会」、すなわち国会の機能が麻痺する事態に陥る可能性が高まります。

国会停滞に拍車をかける野党の「バラバラ」な現状

ここまでは与党側の視点での分析ですが、野党の視点から参院選後の国会を眺めれば、別の結論があってもおかしくありません。今回の参院選で自公両党を過半数割れ(50議席以下)に追い込めば、野党は衆参両院で多数を占めることになります。本来であれば、野党提出の法案を通しやすくなり、さらには野党が結束して自前の首相を選出し、自公両党から政権を奪取することも理論上は可能です。しかし、現実には野党に結束しようとする動きは、ほとんど見られません。鈴木氏は「野党が一致して法案を出せば、多数の衆院で可決できるのにそれをやらない。国民民主党は『年収103万円の壁』の撤廃、日本維新の会は高校授業料無償化法案、立憲民主党は年金改革法案と、それぞれが手柄を争うかのように、自公と協議して成立させてしまいました」と、野党間の連携のなさを批判します。国会会期末に内閣不信任案を提出して与党と対決する動きもなかったことから、「野党はてんでバラバラ、政権交代を目指す気なんてないと批判されても仕方ありません」と手厳しい見方を示しました。ジャーナリストの須田慎一郎氏も、こうした野党の現状に対して同様の批判的な見解を述べています。

参院選の結果が日本の政治に与える影響

今回の参議院選挙の結果は、石破政権の行方だけでなく、今後の国会運営に決定的な影響を与えます。与党が参議院で過半数を維持できるかどうかが、法案審議の円滑さ、ひいては政治全体の安定性を左右するでしょう。仮に衆参両院で少数与党に転落した場合、法案の成立は極めて困難になり、「何も決まらない国会」となるリスクが高まります。さらに、政権交代を目指す大きな動きが見られない野党の「バラバラ」な現状も、この政治停滞に拍車をかける要因となります。参院選の結果は、日本の政治が今後停滞の時代を迎えるのか、あるいは新たな局面を迎えるのかを示す重要な指標となるでしょう。

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