40代独身で貯蓄300万円は十分か?平均・中央値から見る老後への備え

将来への不安や予期せぬ事態に備え、早くから資金の確保に努める人は少なくありません。資金を増やす代表的な手段の一つが貯蓄です。定年までに目標額を貯めようと励んでいる方も多いでしょう。この記事では、40代独身で貯蓄額が300万円というケースを取り上げ、その貯蓄が老後資金として十分であるかどうかをデータに基づいて検証します。300万円は決して少なくない金額ですが、長期的な視点で見るとどうなのか、40代の平均貯蓄額や中央値と比較し、老後にかかる費用をシミュレーションしながら解説します。

40代独身者の老後資金と貯蓄について考えるイメージ40代独身者の老後資金と貯蓄について考えるイメージ

40代単身世帯の平均貯蓄額と中央値

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」は、各年代の金融資産保有状況を知る上で重要なデータを提供しています。この調査によると、40代単身世帯における金融資産保有額の平均値および中央値は以下の通りです。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」による40代単身世帯の貯蓄額データ表金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」による40代単身世帯の貯蓄額データ表

(出典:金融広報中央委員会 知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」より作成)

調査結果を見ると、金融資産を300万円未満しか保有していない40代単身世帯の割合は20.3%でした。さらに、金融資産を全く保有していない世帯は全体の40.4%に上ります。このデータに照らすと、貯蓄300万円という相談者は、全体の約6割の世帯よりも多くの金融資産を持っていることになります。また、中央値が「47万円」であることを考慮すると、300万円という金額は、必ずしも平均を下回る少額ではないと言えるでしょう。

貯蓄300万円で老後の生活費は賄えるか?

次に、貯蓄300万円が老後の生活費をどの程度賄えるかをシミュレーションします。総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)」によると、令和5年度における65歳以上の単身無職世帯の1ヶ月あたりの平均的な総消費支出は15万7673円でした。これは、税金や社会保険料などの非消費支出1万2243円と、食費や光熱費などの消費支出14万5430円を合計した金額です。

仮に、この単身世帯が65歳で仕事を辞め、毎月この金額を支出すると想定します。老後の収入の柱となるのは年金です。厚生労働省の資料によると、令和5年度末における平均的な老齢年金の月額は以下の通りです。

  • 厚生年金保険(第1号、受給資格期間25年以上):14万7360円
  • 国民年金:5万7700円

毎月の支出額(15万7673円)とこれらの年金受給額を比較すると、以下の収支バランスになります。

  • 厚生年金保険を受け取る場合:マイナス1万313円
  • 国民年金を受け取る場合:マイナス9万9973円

このシミュレーションに基づくと、年金だけでは毎月赤字が発生し、その不足分を貯蓄で補う必要があります。貯蓄300万円がこの不足分をどれだけカバーできるかを計算してみましょう。厚生年金受給の場合は、毎月1万313円を補填すると約290ヶ月、つまり約24年間持ちます。一方、国民年金受給の場合は、毎月9万9973円を補填すると約30ヶ月、わずか約2年半で底をついてしまいます。

このように、受け取る年金の種類や金額によって、老後の収支バランスは大きく変動し、貯蓄300万円で生活費を賄える期間も大きく左右されることがわかります。

まとめ:データが示す老後資金の課題

40代独身で貯蓄300万円という金額は、同世代の平均や中央値と比較すると決して少ないわけではなく、むしろ上位に位置します。しかし、老後の生活費を年金だけで賄えない場合、その不足分を貯蓄から補填する必要が生じます。シミュレーションが示す通り、受け取る年金額によっては、貯蓄300万円が十分な期間を持たない可能性があります。特に国民年金のみに頼る場合は、早期に資金が枯渇するリスクが高いと言えます。

このことから、40代に入った単身者にとって、現在の貯蓄額だけでなく、将来の年金受給見込み額や退職後の支出計画を具体的に立てることが非常に重要であることがわかります。300万円という貯蓄は、今後の資産形成のための土台となり得ますが、それをいかに増やし、老後生活を安定させるかを検討する必要があります。今からでも遅くはありません。将来を見据えた資産形成について具体的に考え始め、計画的に実行していくことが、安心して老後を迎えるための鍵となります。

出典:

  • 金融広報中央委員会 知るぽると「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」
  • 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)令和5年」
  • 厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」