シャチが人間に「プレゼント」? 謎の行動を解明する科学者たち

世界中の海で、最強の捕食者として知られるシャチが、人間に獲物などを差し出すという奇妙な行動を見せており、科学者たちの間で注目を集めています。この「シャチ プレゼント」と呼ばれる現象は、彼らの社会性や人間との関わり方について新たな洞察を与えています。

世界各地で確認されたシャチの「贈り物」とその観察例

カナダの海洋研究団体「ベイ・セトロジー」をはじめとする国際的な研究チームは、世界4つの海域でシャチが人間に得たばかりの魚、哺乳類、海藻など18種に及ぶものを差し出す30以上の事例を記録しました。これらの行動では、シャチは必ず人間の反応を待ってから、その「贈り物」を回収するか放棄していたといいます。

海中で獲物のようなものを口にするシャチ海中で獲物のようなものを口にするシャチ

ベイ・セトロジー代表のジャレッド・タワーズ氏は、若いメスのシャチがカメラに近づき、口を開けて死んだ海鳥を吐き出した具体例を挙げています。そのシャチはタワーズ氏の反応を伺うように動きを止め、しばらくして再び鳥を飲み込んだとのこと。また、別のあるケースでは、シャチがアザラシの赤ちゃんの死骸をボートのすぐそばに落としていった事例も報告されています。

行動の背景にある可能性:社会的な交流か探求か

研究チームは、シャチのこの行動が「文化的に学習された行動の一部であり、他種との交流を試みる社会的な表現」である可能性を指摘しています。獲物を分け与えるという行為は、単なる捕食や食物の共有という自然科学的な側面だけでなく、シャチと人間の間の「交流や畏敬と敬意にあふれた共存関係」を示唆するものとして位置づけられています。タワーズ氏は、こうした行動の理由を一つに絞ることは難しいとしつつも、「シャチが人間を探求し、我々を知るための方法」である可能性を主な要因として示唆しています。

解明が進むシャチの複雑な社会性

シャチによる人間に物を「贈る」という不思議な行動は、彼らの高度な知能と社会性、そして人間との複雑な関係性を示唆しています。科学者たちはこの謎めいた行動の真の意図や背景の解明に向け、引き続き研究を進めています。

Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/ae3808a58d161fe4887989e828eaf25aa7926545