日本で最も売れているクルマN-BOX。2024年度も新車販売台数1位をキープし、年度の新車販売台数においては4年連続で、軽自動車の新車販売台数においては10年連続の1位となり、もはや帝王といっても過言ではない。ただそんなN-BOXの名前を冠するモデルでありながら、一世代で消滅してしまったものがある。それが2014年12月に初代N-BOXの派生車種として登場したN-BOXスラッシュである。
【画像ギャラリー】うそだろN-BOXだろ!?実用的な軽自動車だろ!?箱型クーペのN-BOXスラッシュって内装もこんなにレーシーでかっこいいのか!!(24枚)
文:小鮒 康一/画像:ホンダ、ベストカーWeb編集部
遊び心から生まれたN-BOXスラッシュ
2011年12月の初代N-BOXから3年後に登場したN-BOXスラッシュは、エクステリアデザイナーが遊び半分で書いたスケッチがきっかけとなっており、そのスケッチを見た開発メンバーがインテリアのデザインも作り上げ、しまいには開発の予定もないのに原寸大のモックアップまで作ってしまったという逸話がある。
そんな型破りな生まれ方をしたN-BOXスラッシュは、N-BOXの美点である高いルーフやスライドドアを大胆に捨てている。しかも、ルーフは100mmも低められ、リアドアもクーペスタイルを実現するためにヒンジドアとした上で、ドアノブをウインドウ横に移設している。
インテリアも基本的なレイアウトこそN-BOXと共通だが、インテリアカラーパッケージという特徴的な組み合わせの内装色が用意されたことで、メーカー純正とは思えないファンキーなものを選ぶことができた。
さらに上級グレードでは、8スピーカー+1サブウーファーという構成の「サウンドマッピングシステム」を標準装備。まるでカスタムサウンドショップで組んだかのようなこだわりの音響システムが組み上げられていたのもN-BOXスラッシュならではの要素となっていたのである。
短命と言われるわりには人気があった!?
またN-BOXの派生車種ではあるものの、N-BOXスラッシュのみに与えられた装備に電動パーキングブレーキが挙げられる。この電動パーキングブレーキはブレーキワイヤーを用いない直動式ドラムブレーキとしては世界初となるものだった。
このように非常に個性的な仕上がりとなっていたN-BOXスラッシュは、ベースのN-BOXが2017年9月に2代目へとフルモデルチェンジを果たした後も継続販売され、2020年初頭まで販売が続けられた。
そう考えると1世代のみで消滅したモデルでありながら、長らく販売が続けられた根強い人気を持ったモデルとも言える。現在は3代目N-BOXの派生車種としてN-BOX JOYが存在しているが、N-BOXスラッシュのようなファンキーなモデルの再登場も期待したいところだ。