ゴンチャ、タピオカブーム終焉後も勢い止まらず…その成功の秘密とは?

タピオカチェーンとして広く知られる『ゴンチャ』が、現在もその勢いを増し続けています。2021年から2024年の間に店舗数を倍増させ、さらに2028年までに国内400店舗の展開を目指しています。従来のカフェチェーンが主に「コーヒー」を主力商品としてきた中で、『ゴンチャ』は自らを「ティーカフェチェーン」と位置づけ、異色の存在として躍進しています。特に、主力であった「タピオカ」が典型的な一過性の「ブーム」として認識されていたにも関わらず、ブーム終息後も好調を維持している点は注目に値します。一体、『ゴンチャ』がこれほどまでに人気を保ち続ける理由は何なのでしょうか。

日本上陸10周年 ゴンチャ 原宿コンセプトストアの洗練された店内空間日本上陸10周年 ゴンチャ 原宿コンセプトストアの洗練された店内空間

拡大する「非コーヒー」チェーンの波

『ゴンチャ』の経営企画本部長を務める酒井洵氏は、その理由の一つとして、ペットボトル飲料を含めたお茶のマーケットが拡大してきたことを挙げています(プレジデントオンラインより)。カフェチェーンの主力は「コーヒー」でしたが、近年はカフェ市場全体の規模拡大が鈍化する傾向にある一方で、「お茶」を主力とする新たな業態が台頭しています。例えば、スターバックスは2000店舗目を「ティー専門店」として開業し、ここ数年で「ティー業態」の店舗を増やしています。また、タリーズも紅茶に特化した『&TEA』の出店を拡大、コメダ珈琲店も和風喫茶『おかげ庵』を展開するなど、「非コーヒー」市場は特にここ数年で顕著な伸びを見せており、『ゴンチャ』もこの流れにうまく乗ることができたと考えられます。

このような「非コーヒーチェーン」において重要視されているのが「空間性」です。これらのチェーンに共通するのは、店内レイアウトが比較的ゆったりとしている点です。『ゴンチャ』も、かつてはテイクアウト中心でしたが、近年はカフェ型の店舗を増やし、洗練されたデザインのゆったりとした空間を提供しています。これは、紅茶が持つ「アフタヌーンティー」のような、ゆったりと時間を過ごすイメージと関連しているでしょう。「ヌン活」(アフタヌーンティー活動)が話題になる中、より手軽に「ヌン活」を楽しみたい層の需要を、こうした居心地の良い空間が支えている側面もあります。

ちなみに、2024年7月のマイボイスコムの調査によれば、「コーヒーを全く飲まない」と回答した人は全体の10%に上ります。これは、2012年の調査時の5.6%から増加しており、年々「コーヒー離れ」が進む可能性も示唆されています。このような背景も、「ティー」業態にとっては追い風となっており、『ゴンチャ』の成功を後押しする一因となっています。

ゴンチャ独自の強み:「ファンマーケティング」と「推し活」

しかし、数ある「非コーヒー」業態の中で、「なぜ『ゴンチャ』がこれほどまで強いのか?」という疑問が残ります。その答えを解く鍵の一つが、「ファンマーケティング」にあると考えられます。かつて酒井洵氏にインタビューした際、ゴンチャの差別化要因として「従業員体験の向上」と「ゴンチャの『推し活』化」の二つを挙げられていました。実は、これらは密接に結びついています。

まず「ゴンチャの『推し活』化」についてです。『ゴンチャ』には、特に若い女性を中心に熱狂的なリピーターが多く、根強いファン層が存在します。こうしたファンの熱量を活用し、ファンと店舗が一体となって『ゴンチャ』というブランドを共に作り上げていくことを目指しています。酒井氏は、「レシートアンケートのコメントを見て会社としてアクションを変えたり、店舗で働くスタッフの声を聞いてオペレーションを改善したりしています。スターバックスさんやタリーズさんのように巨大なブランドではないからこそ、ファンや従業員の皆さんに『自分の声が届いている』と感じていただきやすいのだと思います」と語っています。

さらに、2024年5月からはゴンチャのファンプログラムである『My Gong Cha』をスタートさせました。これはアプリを使ったポイント制度ですが、「ファンプログラム」と銘打たれている点が特徴です。店舗に通うほどランクが上がり、それによってゴンチャへのエンゲージメントやロイヤリティがさらに高まる仕組みです。

ファンが従業員へ:新たな人気バイト像

このような「ファン」が増える中で、そこから自然と「アルバイト」「従業員」が生まれてくるという流れも生まれています。かつて、大学生に人気のアルバイト先の筆頭として『スターバックス』が挙げられていました。現在もスタバ人気は根強いですが、ここ数年でその人気バイトのポジションに『ゴンチャ』が台頭してきているという傾向が見られます。熱心なファンだった人が、ブランドへの愛着から働くことを選び、質の高いサービス提供につながるという好循環が生まれているのです。

結論

『ゴンチャ』のブーム後における継続的な成功は、単にタピオカという商品やティー市場の拡大だけでなく、市場の「非コーヒー」シフトというマクロトレンド、快適な「空間性」の提供、そして何よりも熱量の高いファン層を巻き込む独自の「ファンマーケティング」戦略、そしてそれが生み出す従業員エンゲージメントといった、複数の要因が複合的に作用した結果であると言えるでしょう。特に、ファンを大切にし、その声を経営や店舗運営に反映させることで、顧客満足度と従業員満足度を高め、ブランドへの強い愛着を醸成している点が、他の追随を許さない強みとなっています。

参考資料