米テキサス州中部で発生した壊滅的な鉄砲水により、多数の死傷者が出たキャンプ場「キャンプ・ミスティック」。この施設の多くの建物が、十数年前に作成された洪水リスクを示す公的な地図から削除されていたことが、米メディアの報道で明らかになりました。河川の氾濫によって甚大な被害が出たこのキャンプ場では、これまでに27人の子供の死亡が確認されています。
洪水リスク地図からの削除問題
米紙ニューヨーク・タイムズとAP通信は、公的記録を引用し、米連邦緊急事態管理局(FEMA)が2011年に作成した洪水高リスク地域の地図に、今回氾濫したグアダルーペ川沿いの低地に位置するキャンプ・ミスティックを当初は含めていたと報じました。しかし、キャンプ場側がこの指定に異議を申し立て、その指定が覆されたとされています。この件に関して、BBCはFEMAとキャンプ・ミスティックにコメントを求めていますが、現時点で公の発表はありません。
専門家が指摘する問題点
FEMAは洪水リスク地図を「地域社会が、どの地域が最も洪水のリスクが高いかを把握するためのツール」と説明しています。FEMAの洪水地図を研究する専門家は、川沿いにあるキャンプ・ミスティックが地図から除外されたことを「不可解」だと感じていると述べています。特に子供向けのキャンプである点を強調し、洪水対策においては最低限の基準だけでなく、より慎重な対応が求められるべきだと指摘しています。
詳細な地図情報と影響
ニューヨーク・タイムズによると、FEMAの公式な洪水地図では、キャンプ・ミスティックの一部のキャビンは、特に危険な洪水の流路と想定される「フラッドウェイ」区域内にあったとされています。また、その他のキャビンも、100年に一度の規模の洪水が発生する可能性のある区域内に位置していました。こうした指定は通常、キャンプ場側に対し、洪水保険の加入義務や、建設プロジェクトにおけるより厳格な規制を課すことになります。同紙はさらに、FEMAのこれらの地図は、キャンプ・ミスティックから提出された書面による異議申し立てを反映していないとも伝えています。
テキサス州キャンプ・ミスティック、河川氾濫による洪水で浸水した建物と敷地
被災状況と犠牲者
人気の女子サマーキャンプ場であったキャンプ・ミスティックでは、4日未明に洪水が施設を襲い、少なくとも27人の少女が死亡しました。テキサス州全体では、洪水による死者が少なくとも129人に達し、多数の行方不明者が出ています。
大統領の対応と論争
ドナルド・トランプ大統領は11日に被災地を訪れ、家や財産を失った人々への政府による復興支援を約束しました。トランプ氏は被災状況を見て「こんな光景は見たことがない」と述べました。しかし、住民への警告が遅すぎたのではないかと遺族から声が出ていることについて記者から質問されると、「そんな質問をするのは悪人だけだ」と述べ、質問には応じませんでした。
警告の遅れと被害拡大の要因
今回の甚大な悲劇を受けて、適切な警報が出されていたのか、またなぜキャンプ場にいた人たちが事前に避難しなかったのかについて、疑問の声が上がっています。複数の専門家は、鉄砲水の発生時間が夜明け前であったこと、被害に遭った一部の住宅の立地条件、携帯電話の不安定な通信状況、そして洪水の速度や激しさなど、複数の要因が重なり、被害が拡大したと指摘しています。
参考文献
- BBC News
- Yahoo News articles/d1bf231a1d530705dc8cd17804e4a941c1f45f62