参院選鹿児島選挙区に波乱:重鎮・尾辻秀久氏の娘が立憲推薦で出馬、保守王国が揺らぐ

7月20日に投開票を迎える参議院選挙において、「保守王国」と称される鹿児島選挙区(改選数1)が前例のない波乱に見舞われています。長年自民党の重鎮として影響力を持ってきた尾辻秀久氏(84)の三女、朋実氏(44)が、立憲民主党の推薦を受け、無所属での立候補を表明したためです。秀久氏の今期限りでの政界引退に伴い、別の候補者を擁立した自民党内からは不満の声が上がっており、新興政党の候補者も勢いを増す中、激しい選挙戦が繰り広げられています。

参院選鹿児島選挙区の候補者ポスター掲示板。激戦が予想される鹿児島での選挙戦の様子を示す。参院選鹿児島選挙区の候補者ポスター掲示板。激戦が予想される鹿児島での選挙戦の様子を示す。

自民党公認候補の「嘆き」と予期せぬ展開

7月8日夕方、鹿児島市内のホテルで開催された個人演説会で、自民党公認の元職である園田修光氏(68)は壇上で「相手候補をとやかく言いたくはないが、秀久氏にしっかり指導しておいてもらいたかった」と嘆きました。この「相手候補」とは、言うまでもなく尾辻朋実氏を指しています。自民党は、参院議長や厚生労働相を歴任し、長らく議席を維持してきた秀久氏の引退意向を受け、昨年7月に後継候補の公募を実施。園田氏や朋実氏を含む計9人が応募し、昨年末に園田氏が後継として選ばれることになりました。しかし、自民党関係者にとって予想外だったのは、公募に漏れた朋実氏のその後の行動でした。朋実氏は今年1月に立憲民主党に入党し、3月下旬には同党の推薦を受けて無所属での立候補を正式に表明するに至ったのです。

尾辻秀久氏の「裏切り」に党内が憤慨

自民党県連の田畑隆治事務局長は、「寝耳に水。信じられなかった」と当時の衝撃を振り返ります。長年、秀久氏を支援してきた県医師会の役員からも、「納得はしていない。釈然としない」と、憤りにも似た困惑の声が漏れています。鹿児島県は平成13年から1人区となって以来、自民党が議席を維持し続けてきた地域であり、地元選出の重鎮である秀久氏の影響力は絶大でした。それだけに、その身内である朋実氏の「離反」は、自民党関係者にとって大きな衝撃と受け止められたのです。県連所属議員らが秀久氏に経緯を質したところ、「娘を止めたが、言うことを聞かなかった。(朋実氏の)参院選には協力しない」と釈明しました。ところがその後、秀久氏の後援会関係者らに対し、秀久氏本人から「娘を頼む」との電話があったという情報が自民党県連に寄せられ、党内の混乱に拍車がかかる事態となりました。ある自民党県議は、「老いて晩節を汚した」と秀久氏への怒りを露わにしています。

連合も葛藤、勝利候補を模索

労働組合の全国中央組織である連合もまた、この複雑な状況下で葛藤を抱えています。しかし、最終的には「勝てる候補を」という現実的な視点から候補者を見極めようとしており、鹿児島選挙区の行方は依然として不透明なままです。

結論

今回の参院選鹿児島選挙区は、長年の「保守王国」の基盤が揺らぐ異例の選挙戦となっています。自民党の重鎮である尾辻秀久氏の娘が、立憲民主党の推薦を受けて無所属で立候補したことは、党内外に大きな波紋を広げ、深い遺恨を残しています。関係者の複雑な感情と、複数の候補者が絡み合う構図は、選挙結果に予測不能な要素をもたらし、今後の日本の政治状況にも影響を与える可能性があります。


参考文献: